自分自身で イノベーションを起こさない限り、 大きな革命は生まれない

神戸北野ホテル
山口 浩

山口浩 神戸北野ホテル

■今行かないと絶対後悔する、と単身パリへ。

フランス行きはどのように実現されましたか?

山口氏:
パリに行きたいと思い続けていた時、ホテルのシェフのところに、パリで働く友人シェフが訪ねて来たので僕はもう興味津々で(笑)。「なんの話してるんやろ」と、仕込みをしながら厨房で聞き耳を立てていました。すると話の内容が「パリで働いてくれるいいシェフを探している」という話でした。「えっ!これはチャンスかも!」と直感しました。そして悩んだ挙句、思い切ってシェフに相談したところ話を通してもらえたのです。

決まった仕事は、パリの「ホテル日航」のスタッフとして1年間働けるとてもよい条件の話で…会社に就労ビザも取ってもらえて、お給料をもらってパリで働くことができるというものでした。そこで退職願も出してパリへ行く準備を始めたのですが、なんとパリと日本の大使館同士の政治的なトラブルに巻き込まれてしまって…急に就労ビザがおりなくなってしまったのです。

その頃すでに結婚して子供もいましたので、家族一緒にパリへ行く気満々でしたし…本当に落ち込みました。そして「これからどうしようか」と街を走る沢山の車を見ながら考えていた時、「車1台分くらいのお金があれば、パリに行けるのだ」と思いました。そのくらいのお金で、自分がやりたいことが今まさに叶うのだ…やらないと絶対に後悔する。観光ビザでもなんでもいいから、とにかく自力でパリへ行ってみよう!と考え直したのです。

そして「ホテル日航」側に、研修生としてでも修業を受け入れてもらえないかと交渉して、とりあえず3か月間だけ修業させてもらえることになり、家族が暮らす分のお金を借金し、妻と子を日本へ残して単身パリへ飛びました。

夢を諦めることなく強い意志で前へ進まれたのですね。フランス修業はいかがでしたか?

山口氏:
フランス語は喋れる…と思っていたのですが、現場では全く通じなくて参りましたね。厨房で飛び交う言葉はフランス語学校のスピードじゃないし、頭で日本語に訳していたのでは仕事にならない。

そこで通勤時間に道路を走る車のナンバーを見て、早く数字を読む訓練をしたりしました。ホテルの修業期間は3か月と決まっていましたから、限られた時間をいかに努力して有意義なものにするか…毎日が時間との戦い。

24時間フランス料理のことだけを考えていましたから、1日が今の3倍くらいの密度でした。そしてフランス人シェフの技術を目の前で見て、技術の細やかさなど自分が優れている部分に気づけましたから、次第に自信も生まれてきました。

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■敬愛する師、ベルナール・ロワゾ―氏との出会い

3か月のホテル修業後はどのような修業をされましたか?

山口氏:
ホテルの修業中に様々な店を食べ歩き、次に修業する店を探しました。一軒目に修業した店は一つ星レストラン、2軒目はパリの二つ星レストラン「フォージュロン」です。
修業先を見つけるのはそんなに簡単では無かったのですが、先人がフランスへ渡り、日本人の勤勉さや手先の器用さをフランス人に認めてもらえていたおかげで、日本人シェフはとても重宝されていましたね。

そして次にブルゴーニュの名店「ラ・コート・ドール」(現「ルレ・ベルナール・ロワゾ―」)でロワゾー氏の料理に出会い、「絶対にここで働きたい!」と直談判し修業させてもらえることになりました。
パリから大きな荷物を持って各駅停車へ乗り、店の裏口で出迎えてくれたスタッフに「山口か…じゃお前は今日からヤマと呼ぶぞ」と言われたこと…今でも昨日のことのように憶えています。

ロワゾ―氏の元での修業はいかがでしたか?

山口氏:
「ラ・コート・ドール」は三つ星を取ったばかりの新進気鋭のレストラン。先に修業した2軒は大きな店だったこともあり2番手のシェフが調理場に立つことがほとんどで、総料理長の姿を見る機会が少なかったのですが、ロワゾ―氏は常に現場にいました。

彼は厨房で大きな声で怒鳴ったり、「ヤマ!俺たちは最高やろ?!」とご機嫌になってみたり、有名なミュージシャンの振り付けを真似してみたり…賑やかで喜怒哀楽がストレート。とても個性的なシェフでした。

最初の仕事はパセリをちぎったり、野菜の千切りをしたりと下働きばかり。フランス人シェフの千切りを見たら太さも長さもバラバラで…包丁を研ぐこともしていなかった。これでは美味しい料理にならないと一目で思いましたね。

僕は何を求められているのかわからなかったけれど、指示されたネギの千切りも一切手を抜かずに仕事をしていました。するとある日、厨房でロワゾー氏が僕の千切りを手に取って「これを切ったのは誰?」と叫んだのです。近くにいたシェフが「それを切ったのはヤマです」と答えたところ、彼は「ヤマは天才や!俺が欲しかったのはコレだ!」と言ってくれた。そしてその日、ロワゾ―氏は僕をストーブ前に抜擢してくれたのです。

洋食レストランで先輩や同僚に馬鹿にされながら千切りしていた日々が、報われた瞬間でした。当時は「こんなことして意味あるんかなぁ」と自分のやっていることに自信を失うこともあったのですが、ロワゾー氏に認められた。それは僕の一番の自信になりました。

とても素敵なエピソードですね!山口氏はいつでも目の前の仕事に真剣に向き合われていますね。

山口氏:
それは料理のすべてでいえることだと思います。例えばソースを作る時もすべての過程を繊細に観察し、一番おいしくなるタイミングを決して逃さないという気持ちで行うこと。

そして自分がした仕事をシェフが味見したり、見に来たりするタイミングはすべてチャンスに繋がるのです。ロワゾ―氏の場合は、あかん時には「これはダメ!」と言い、いい時は逆に黙るのですが…それを見て僕は心の中で「よっしゃ!」と思う(笑)。ひとつひとつの仕事に緊張感をもって接すると、毎日の仕事も戦いになります。

こうして日々を積み重ねるうちに「ラ・コート・ドール」の日本出店が決まり、ロワゾ―氏に「日本支店の料理長をやれ」と言って頂くことができた。そして日本支店の料理長として、日本に帰ってくることになったのです。

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