京料理に求められるのは、冒険心と次世代への技術継承

祇園 さゝ木
佐々木 浩

祇園ささ木 佐々木浩

■料理人に大切なのは、“気づく”能力。弟子は「来る者は拒まず、去る者は追わず」、とことん向き合う。

若くて実力のある料理人のみなさんはよく“人の育成”が難しいとおっしゃってますね。この企画でインタビューした、老松の喜多川さんも、佐々木さんにそうおっしゃられたと、言っていました。佐々木さんは一流料理人を何人も育ててこられていますが、どんなことを大事にされているのでしょうか?

佐々木氏:
もちろん難しいですよ。自分の子どもでも難しいのに、赤の他人なんですから。

大事にしているのは、とにかく「向き合う」こと。とことん向き合う。よく、「かわいいから怒る」なんていうけど、そんなのは嘘だ。怒るのは、本気で腹立ってるから。「向き合ってる」から、本気で腹が立つんです。「どついたろうか」と。今は手は出していませんが、調理場の壁がボコボコしてるのは、僕の拳の跡です(苦笑)。

佐々木さんが怒るのは、どんな時なんでしょうか?

佐々木氏:
たとえ鯛をおろして失敗しても、怒りません。でも、お客さん本位に考えてなかったらめちゃくちゃ怒ります。例えば、「吉兆」さんでなんで草むしりや掃除から修業を始めるか。それは、気を遣える人間にするためです。気を遣えない人間は、なにをしても無理です。

あと僕は、「スケベになれ」って言います。スケベな人間って、カメラマンで言えば一瞬のシャッターチャンスを見逃さないですよね。ある意味、女の子のパンツがチラッと見えるような、その瞬間を見逃さないこと(笑)。それと同じように、料理でも「今砂糖入れたな」「今塩入れたな」という瞬間が見えない人間はダメですね。それが気遣いにつながるのですから。

「情熱大陸」(※ドキュメンタリー番組)でこれを言ったら、電話が殺到して、「うちの調理場には、そんなエッチなヤツは誰もいないぞ」なんて。いや、そういうことを言ってるわけでは無い。比喩ですからね。大人として理解して欲しいよね(笑)。

上から言われる前に自分で気づいて、先回りしろということですね。さて、“入れてほしい”とやって来る若い方を採用する際はどんなところを見ますか?

佐々木氏:
見る、というか、全員入れます。僕の基本的な考え方は「来る者拒まず、去る者は絶対追わない」です。

「僕この道に合わないと思うんです。今月で辞めさせてください」ときたら、その場で辞めてもらいます。いつも言うんですが、2ヶ月で合わないなんて、ありえない。一生懸命3年間やって合わないというならどこでも紹介するけど、たった2ヶ月でわかるかそんなもん!と。

誰でも受け入れて、その人その人に合った教育をするということでしょうか?

佐々木氏:
教育はしません。ついてきてくれる子には何でも教えるけど、ついてこれない子は自然に辞めていくし。

それぞれの立ち位置も、僕が決めるんじゃなくて自分たちで決めるもので、例えば「俺が先輩や」って威張ったりする子もいるけど、「自分で言うんじゃなくて、“この人はやっぱり先輩やなぁ”と思われる人間になれ」と伝えています。

永ちゃんの歌じゃないけど、「It’s up to you」、自分次第ですよ。

祇園ささ木 まかない
まかないは皆で頂く。店のスタッフが揃う大切な時間。

■若い料理人のための組織づくりを目指す

ところで、独立して20年くらいですが、今後の夢はいかがですか?

佐々木氏:
今この本店以外に「楽味」という大人の居酒屋を出していますが、今度は鶏屋、それから串カツの店を出していきたいですね。同じ業態だと甲乙ができるので、僕が好きな食べ物の店を増やしていこうと思ってます。

それで、僕もそうだったけど、料理人は金の借り方も知らないような経営に疎い人間ばかりなので、そういう人に料理長とか店主になってもらいたい。

僕は今55歳。50過ぎたら、芋やカボチャを炊いたりは経験があるから若い奴よりうまくできるけど、頭が固まって発想力がなくなってくる。だから、これから60までの5年間で、一生懸命彼らのためのスタイルを作ってあげたいと思ってます。

そうして、今の子たちが60になっても、さらに若い子が育ったらまたその店が継続していくわけです。そうやって大きな会社にして、取締役としてお金をもらったらいいじゃないですか。そんなシステムを作りたいなぁと思ってます。

それで年金とか役員報酬がちょっとでももらえたら、僕だけじゃなくて次世代の子たちも旅行にだって行けるし、孫にキャンディーを買ってあげることもできるでしょ。そういう生活をさせてあげるのが僕の夢です。

これからは独立してもそんなに儲かる時代じゃないですし、売上に対する歩合制で給料を取ったらいいと思うんです。会社が税金を負担して、売上でなく粗利からバックすれば、そこそこの給料になるんちゃうかな、と思うんです。

半分オーナーみないな感じですね。イチから店舗を借りると失敗する人も出てくるでしょうしね。

佐々木氏:
そうですね。今までたまたまみんな成功してるから、安易に考える若い子が多い。うちが常に満席やから、自分の店も簡単に満席になると思ってるけど、そこにいくまでどんだけ努力してるか全然わかってないもん。

祇園ささ木 外観

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