京料理に求められるのは、冒険心と次世代への技術継承。

祇園 さゝ木
佐々木 浩

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■「人を喜ばせられる」から選んだ料理の道

小さいころから料理の道を目指しておられたのでしょうか?

佐々木氏:
いえいえ、小さい頃はパイロットになりたかったんですが、まぁそれは子どもの夢ですよね。
僕の家系は祖父の代から仕出し屋で、父親は割烹、叔父もいとこも寿司屋や旅館だったりと、全員料理関係という一族に生まれたんですよ。

それで両親が共働きでかぎっ子だったので、うちが友達のたまり場になってた。そう、その頃はちょっと悪い子だったかもしれませんね(笑)。それで、そいつらに冷蔵庫のもので焼きめしとかハンバーグを作るようになって、そうするとさらに人が集まって来て、みんな「おいしい!」と言ってくれるんですよね。「こんな俺でも人を喜ばせることができるんや」と思って、自分からこの道を選びました。

友達に作っておられた焼きめしやハンバーグというのは、ご家族から教えてもらったんですか?

佐々木氏:
いやいや、見よう見まねというか、自己流でしたね。家族が料理するのを見ていたので、友達が「腹減った~」と言うと「じゃあ、なんか作ったろうかぁ」みたいな感じで。

それと、当時ステレオに凝っていて学生ながらローンを組んでたので、親戚の店でバイトをしてたんですよ。そこでブリの水洗いとか出汁巻の作り方を覚えましたね。

それで、高校を卒業して、自宅のあった滋賀の「臨湖庵」という料理旅館に修行に入ったんです。1980年ごろの話です。

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■「3つ上の先輩までは飲んだる」と3時に起きて働き、休みの日は道場破りをしていた修業時代

料理人の家系に生まれながらも、家族からの強制などではなく、自然な流れで料理の道へ入られたんですね。修業時代は、どんな新人だったのでしょうか?

佐々木氏:
やっぱり1年生なりの下働きの仕事があるんですが、僕は家庭環境のおかげで「紅タテ取って来い」「棒麩取って来い」と言われても何のことかすぐに分かった。そこで、そのアドバンテージを活かしてリーダーを張ってやろうと、入ったころからいろいろと仕切ってました。リーダーシップを取った方が、仕事がはやく終わりますから。

入ったときから現場を仕切っておられたということは、先輩に対してもですか?

佐々木氏:
最初はもちろん無理でしたよ。ただ、僕は勝気な人間なので、「3つ上の先輩までは飲まなあかん」という気持ちは常にありました。

料理業界はタテ社会だから、先輩を仕切るということは反抗にもなりかねません。そのギリギリのラインを狙うからこそ、それに見合った努力をしようと思いました。

それで、みんなが寝ている3時ごろに目覚ましをかけて調理場に入って、ウナギを割いたりケンにする大根をむいたりしてました。そうすると、例えば狙っているポジションの人が休んだときに、その仕事を先にやっとけば、「あれ、できてるか?」「できてます」「見せてみ」「きれいにできてるな」と実績ができて、「あいつにやらしたれや」となるんですよ。そのおかげで、ふつう最低3年~5年いるところを、僕は2年半で「次行ってこい!」と放り出されました。

休みの日も、「あそこの店に遊びに行きたいんです」とおやじに頼んでおいて、白衣と包丁を持って「お手伝いさせてくださいよ」って他店に行くんですよ。“目の前の奴は敵や”、“こいつに勝つためにここに来た”と思っているので、相手の方が手が速かったりすると「まだまだ僕も甘いな」と、帰ってから練習したりして。遊びに行くと言いつつも、道場破りのような気持ちでやっていました(笑)。ほかにも、朝早く起きて市場に行って、魚を触らせてもらったりもしてましたね。

お休みの日も他店で道場破り、とは!たゆまぬ努力を続けておられたということで、お店でのポジションも上がったのではないでしょうか?

佐々木氏:
まぁツキや運もあったと思うんですが、24歳で二番手の煮方になりました。そうすると、僕の下に26とか27歳の人間がいるんですよ。年上なので相手をたてながら刺さなくてはけない。まだ人生経験が少なかったので、胃が痛くなりましたね。

年上の人間の上に立つ気苦労というのは、30代40代の方からよく聞く話ですが、24歳とはびっくりです。その原動力とはなんだったのでしょう?

佐々木氏:
当時結婚を考えていたんですが、二番手にならないと給料が少ないんですよ。二番手になったら給料も安定するし、他の店に行っても「〇〇で二番手してました」となればいい給料がもらえるので、“二番手になったらプロポーズしよう”と目標を決めた。当時は、「二番手、二番手」とそればかり、思ってましたね。

元から何事も勝たなきゃ気がすまないタイプなんですよ。見栄っぱりなのかもしれない。

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