料理を立体的に捉えれば、表現の引き出しは無限に増える。

アコルドゥ (akordu)
川島 宙

■「日本で一番」をめざして、料理のことだけを考えた若き日々。

料理の世界に入ったそもそものきっかけとは?

川島氏:
もともと料理が好きだったこともありますが、兄の影響を受けたのが本当のきっかけかも知れません。両親が共働きだったこともあって、12歳上の兄が週末になるとラーメンとかチャーハンなんかを作ってくれていました。簡単な料理でしたけど、いたずら好きな兄がふざけてラーメンの中におもちゃとか消しゴムとかを入れたりするんです(笑)
小さい弟を楽しませるための工夫だったと思うんですが、それが今の私の料理の原点になっている気がします。一皿の中に驚きや発見を加える発想は同じですね。

あと漫画やアニメの影響も受けたように思います。「ミスター味っ子』」とか、そういう料理漫画です。ご存知の方もきっと多いんじゃないでしょうか。当時は料理を題材にした漫画が結構あり、よく読んでいました。

他にも、有名なシェフが出ている番組も多かったように思います。三國シェフがペティナイフを持って、海外のスーパーで売っているピーマンとか食材を味見して歩く企画なんかがあって、それを見てフランス料理に憧れたんです。

高校を卒業後は、東京から大阪の辻調理師専門学校に進学されたそうですね。

川島氏:
東京を離れて大阪に来た理由は、知っている人が誰もいない場所でゼロからスタートしたかったからです。その方が自分にとっていいと思いました。昼間は専門学校に通って、夜はレストランで住み込みのアルバイトという生活です。専門学校の友達は授業が終わると遊んでいましたが、僕はずっとレストランの現場で経験を積むことができました。今から思えば、みっちり実務経験を積めたことが良かったと思います。

そうこうしているうちに就職先を考える時期がやってきました。「どうせやるなら日本一の場所で」という思いから、「ホテル西洋銀座」への就職を希望しました。当時は一流の料理と言えば、ニューオータニ、オークラ、帝国などホテルの時代です。その中でも一番だと思ったのが、「ホテル西洋銀座」でした。

ところが、私の通っていた専門学校から「ホテル西洋銀座」への就職枠はたった1名分しかありませんでした。先生に相談しても「やめておけ」と。ですが、まったく諦める気がなかった僕は無理を通して受験し、12名の受験者の中で合格することができました。本当にラッキーでした。

ホテル西洋銀座では、どんなことを学ばれましたか?

川島氏:
当時の「西洋銀座」は、総料理長に鎌田 昭男さんがいらっしゃり、ソムリエの責任者に田崎 真也さんがいるような時代。そんな中、僕は2年ぐらい現場を経験させていただいたのですが、あることをきっかけに料理ではなくサービスを勉強したいと思うようになりました。

その頃、ホテルの宴会係であるバンケットの仕事を担当する機会があって、そこでお客様との関りを見ているうちに、自分にはサービスの経験が必要だと思ったんです。料理がおいしいのは当たり前ですが、お客様に提供するサービスも一流でなければいけない。そう思って次にお世話になったのが、「オークラホテル」です。メインダイニングを2年弱経験しました。

「西洋銀座」もそうでしたが、とにかく厳しくも居心地のよい職場でした。例えば「西洋銀座」では、お皿に盛ってあるシメジの向きが違うだけでも、「ここはお前のセンスを出すところじゃない!」と言ってかなり厳しく怒られるんです。でも、僕が分からないことを聞けば、必ず答えてくれる先輩ばかりで素晴らしかったと思います。

「ホテルオークラ」はすごい職場でしたが、いらっしゃるお客様もすごかった。本当に学ぶことが多い職場で、とにかく居心地が良かったです。しかし、その居心地の良さに甘えてばかりもいられません。このままでは調理に戻れないと思って、再び調理の現場に立つことを決め、大阪のレストランに飛び込んで、そこから2年間勉強させてもらいました。

学びたいことを見つけるたびに、ステップアップされていったわけですね。

川島氏:
これはあくまでも僕個人の考え方ですけど、料理というのはセンスがあれば、技術がなくてもやっていけるんです。例えばヨーロッパに行くと、料理は理屈から覚えます。おいしい料理を考えられるなら、調理は技術力のあるメンバーに任せればいいという発想です。海外ではそういうレストランはたくさんあります。

一方、日本では理屈ではなく技術を学ぶことからのスタートです。料理の世界で一人前になるには、5年・10年と同じ職場で経験することが当たり前ですが、最初の数年は大した仕事を任せてもらえないのが現状です。

また一方で、1つの場所で20年ぐらい経験した人が独立してレストランをオープンするようなケースの場合、前の職場で経験したこと以上のものを持っていなかったりもします。高級なコース料理を出すようなレストランで、料理は一流でもテーブルクロスがビニールだったり、BGMが店の雰囲気、料理とマッチしていなかったり…。

ですので、自分に何が足りないかを考えて、今の場所で習得できるものに区切りがついたら、次のステップへ進むべきだと思っています。若いころ、そういう足りないものを身につける為にキャリア(職場)を選択するという感覚があって、新しいことを学ぶためにいろんな人のもとで勉強をさせていただきました。

 

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