料理を立体的に捉えれば、表現の引き出しは無限に増える

akordu(アコルドゥ)
川島 宙

akordu(アコルドゥ)内観

■味と香りだけが料理の要素ではない。立体的に表現してこそ、人を楽しませる料理が作れる。

自分の料理に悩んでいた頃と、今とは何が違いますか?

川島氏:
1つは、スペインで自由を学んだ点。もう1つが、師匠のもとでの2度目の修業で、おいしさのベクトルを作れたことです。この2つがあるからこそ、今の僕の料理があると思いますし、どちらかが欠けても僕の料理は作れません。

現代スペイン料理の自由な発想は、どんな組み合わせも認められます。そして、どんなむちゃな組み合わせでも、おいしさのベクトルさえあっていれば、イメージからはズレません。以前、富雄で提供していた3500円のランチコースの中に「しめさば」に「苺」と「セロリ」と「抹茶」と「かっぱえびせん」を組み合わせたものがありました。一見、合わないように思えますよね?でも、まとまるんですよ。

それができるようになったのは、僕の中においしさのベクトルが明確にあるからです。この方向性さえ失わなければ、どんどん自分の中で料理の引き出しが増えていきます。その「おいしさのベクトル」を教えてくださったのが師匠です。
そして、自由に発想する大切さをスペインでの修業で身につけたのです。この2つが、僕の料理を成立させていると言えます。

なるほど…型にはまることなく、料理をクリエイティブする。というようなことでしょうか。

川島氏:
もっと言えば、僕は食材を食材として考えていません。目の前に「玉ねぎ」という食材があるとします。で、考えるんです。「玉ねぎって何だろう」と。

玉ねぎの「食感」「香り」「甘味」「苦味」「えぐみ」というように、玉ねぎを構成する要素が、例えば10個あると考えます。すると、1つの食材に10の使い方が見つかるのです。素材が2種類あれば、10×10で100の要素があり、たった2つの素材でも100通りのイメージができるということ。そういう意味では、引き出しは無限です。

1つの食材を「1つの食材」として考えている限りは、この引き出しの多さには気づけません。

そんな発想ができるのも、現代スペイン料理を学んできたからです。中には批判する人もいましたが、今はこうした考えが受け入れられていて、それを可能にする技術もある時代。料理の可能性は、もっともっと広がっていくはずです。

akordu(アコルドゥ)厨房

料理を作る時、どんなことを考えるんですか?

川島氏:
他の人と僕の料理が違うと言われる理由は、イメージから発想するからです。例えば「雨上がりの森」をイメージして、そこには何があるかを想像します。足元は、きっとぬかるんでいるはずです。そのぬかるみを表現するのは何か。肉じゃない、半生っぽいエビの食感が近いかもしれない。そこに艶っぽいピューレを加えれば、ぬめっとした感覚になります。

森を歩ていると、木の枝や葉っぱが腕にあたったりしますよね。では、その感覚を出すには、乾いた何かで表現できるだろう。そんな風に、足裏で感じる感覚、腕や耳で感じるものを、どうやって唇で感じられたり、食べた時の感覚にできるかを考えます。そうすると味や香りだけでなく、もっと料理が立体的に構成されていくのです。

普通は卵をどう使うか、牛肉をどう使うかということから料理を考え、結果としてイメージが生まれます。それが僕は逆なんです。最初にテーマや表題があり、そこに食材を当てはめていくというアプローチです。

そうした川島さんの世界観・イメージは、お客様にも説明するんですか?

川島氏:
最初はしません。語りすぎてはダメです。まずは食べていただきます。というのも、最初から狭い範囲のイメージを伝えたくないからです。「アコルドゥ」はメニュー名がちょっと変わっていて「たった5秒の海」というのがあります。海というテーマはありますが「どこの海」とか「どんな海」という指定はありません。

なぜなら、海という言葉からイメージするものは、人によって違いますよね。夏の海をイメージする人もいれば、冬をイメージする人もいる。同じ季節でも、朝と夜では海が見せる表情も違って当然です。だからこそ、食べる人にイマジネーションを持たせるような料理を考えます。決して作り手である僕のイメージが、食べる人のイメージと一緒ではないのです。メニューにはあえて普遍的なテーマを持たせて、あとは自分でイメージを持って料理を楽しんでいただくというスタンスです。

千利休が残した教えに「利休七則」というものがあります。その中に「花は野にあるように」という教えがありますが、これは茶室にある一輪の花を見た時には、野原が頭に描かれるようにしつらえなさい、という意味です。

僕の料理もこの教えに通じるものにしたい。食べてくれた人が海や山で見たことや触れたもの思い出したり、その時の感覚や気持ちを思い描いてくださるように考えるのが僕の料理。これからも、そんな風にして人に楽しんでもらえる料理をたくさん作っていきたいですね。

(聞き手:市原 孝志、文:上田 洋平、写真:松井 泰憲)

akordu(アコルドゥ)受付

アコルドゥ受付

akordu(アコルドゥ)2F ウェディング会場

アコルドゥ2F ウェディング会場

akordu(アコルドゥ)宿泊ルーム

アコルドゥ2F 宿泊ルーム

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