「創意工夫」「試行錯誤」の先にたどり着けた“シンプル”

天麩羅 ひらいし
平石 貴之

天ぷらひらいし 平石貴之

■経営的な視点も踏まえた天ぷら屋での独立。技術や知識で付加価値をつけるのが料理人の仕事

独立されて9年目だそうですが、独立はいつごろ意識されたんですか?

平石氏:
20代のときに、デンマークでフレンチの二つ星シェフと仕事をする機会があったんですが、イベント後の食事の際に、僕の懐石料理を食べてくれたフランス人のシェフと所得も含めて仕事の話になったんですね。すると、彼らはプライベートの充実のためにレベルの高い仕事をして、給料交渉も当たり前、という明確な考え方をもっているんですよ。日本とフランスの仕事に対する考え方の違いを知ったのが、ぼんやりと独立を考える最初のきっかけでしたね。

現実的に考えたのは、独立する1年前です。
かが万は懐石料理だけでなく寿司やおでんなどの店も展開していて、その時僕は大きな店の店長だったんですが、天麩羅店の店長も経験して、その店でお座敷天麩羅を任されていたんですね。

そこは4人以上からの予約制で、仲居さんもつくので当然単価も高かったんですが、ちょうどモヤモヤしていたときに、お客さんから「4人以上集めるのは大変やし、もっと気軽に天麩羅を食べられる店をやれへんか?」と声をかけられたのがきっかけです。それまでは懐石料理での独立も考えていたんですが、天麩羅なら他にあまりないですし、お客様にも評価していただいているならと、天麩羅屋に決めたんです。
出資の話もありましたが、オーナーがいると好きなようにはできないので、それはお断りしました。
店づくりは、目の届く10席で、それで採算がとれる価格をいただける食材やサービスで勝負しようと、こんな店になりました。

ご自分の料理や店づくりへのこだわりと経営とのバランスについては、どのようにお考えなんでしょうか?

平石氏:
ただ儲けだけを考えれば、レシピさえ作れば誰でもできるラーメン屋の方が儲かるんですよ。でも、僕はそれでは面白くなくて「オレじゃないとできへん」という料理人としての部分を満たしつつ、商売としても成り立つことが大切だと思っています。
よく「採算度外視で」という店がありますが、それでは店を継続していくことはできません。「あのイタリアン流行ってたのに店閉めた」というのは、そういうことなんじゃない?今ならワインバーとか。競合店が増えた時に付加価値がないと、大阪特有の値下げに走って、そうすると業者も一緒にダメになってしまう。
特に高級店であれば、私たちの技術や知識で付加価値をつけること。それが大事なんじゃないかと思っています。

天ぷらひらいし

■10代からの食べ歩きで築いた人脈がはかってくれた、独立のタイミング

師匠とか、影響を受けた方というのはいらっしゃいますか?

平石氏:
僕は若いころから名店と呼ばれる店に食べ歩きに行ってたんですが、やっぱり一流店に若い男が一人でいると目立つので、声をかけてもらえるんですよね。それで悩みを相談させてもらったり、いろんなお店の方にかわいがってもらいました。
おかげで、実は僕はかが万から大阪で独立した第一号なんですが、独立の際にもみなさんかばってくれるんですよ。オープン前ってバタバタして大変やったってよく聞くんですが、僕の場合は「こんなにのんびりしてて大丈夫なんかな」という感じで。
例えば電話をかけてきてくれて「そろそろ工事始まったか?冷蔵庫は少し高くしといた方が、作業が楽やで」とか段取りを教えてくれた方や、設計士を紹介してくれた上にちょいちょい現場を見に来て、大工さんに「こうやってあげた方がいいんじゃない?」と言ってくれた方がいたので、僕は何にもしなくてよかったです。

そうすると、若いころから築いた人脈すべてが師匠のようなものですね。
また、ちょうどいいタイミングで独立されたんじゃないでしょうか。

平石氏:
本当に、結局周りがタイミングをはかってくれた感じがありました。みなさんお付き合いのある方々は一流の人ばかりなので、この人たちの言うことを聞いていれば間違いないな、と。

独立の際にも資金がゼロだったので業者を紹介していただいたりと手も知恵も貸してもらいましたし、「そこまでしていただいていいんですか?」というくらいお世話になりました。
一番うれしかったのは、料理人としてお慕いしていた方から「僕は独立してやっていける能力がない人にアドバイスはしない。誰でも彼でも助けたりしない。」と言われたことで、僕を認めてくれていたんだと、とても印象に残っています。

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