カウンター割烹と日本の食材に魅せられて。和を愛し、独創的な和仏マリアージュを繰り出すフランス人シェフ

メゾン・ド・ミナミ フレンチ割烹 ドミニク・コルビ
Dominique Corby(ドミニク・コルビ)

Dominique Corby メゾン・ド・ミナミ フレンチ割烹 ドミニク・コルビ

■多彩な活動と今後の夢

パリ郊外にフレンチジャパニーズスタイルの高級ビストロ「Le Miyabi」をオープンしたり、フランス料理学校の名門「ル・コルドン・ブルー日本校」でシェフ講師陣を統括するなど、日仏の架け橋として幅広い活躍をされていますね。2007年にはフランス農事功労章シュバリエ(MOMAJ)も受賞しました。

「ル・コルドン・ブルー」で教鞭をとる際には、店で出しているようなオリジナルなレシピはやりません。伝統的なフランス料理を教えています。人との距離も近いですし、ライブ感がありますから教えるのは好きです。料理自体についての学びはありませんが(笑)、教える側としては、とても勉強になります。

海外のシェフから日本の伝統食材や調理法についてアドバイスを求められたり、店で研修生を受け入れたりすることも多いですよ。知っていることをお伝えしていくのは、当然のことだと思っています。いま厨房で仕込み作業をしているフランス人の彼も、実は日本の食材について勉強するために、数日前に来日してきた料理人なんですよ。

次はもっとこんなお店をやってみたい……など描いている夢はありますか?

今もう実現しています。まさにこれが自分の夢です。私は1年後、3年後、10 年後……と先のことはあまり考えず、目の前のことを一生懸命やるタイプ。日本人も外国人も多数来店いただくこのお店で、このライブ感を楽しみながら料理をし続けたいですね。

そうなんですね!堪能な日本語を生かして、ますます日本の食材や調理法についても探求を深め、メニューに反映させていかれることと思います。

トリュフなどフランスならではの食材ももちろん使いますが、日本の食材との新鮮なマリアージュを生み出していきたいですね。野菜、魚、肉……日本の食材はすべて面白いです。まだまだ初めて知る食材が山ほどありますから、探求していきたいですね!日本各地の生産者・販売者と協力してプロモーションイベントを開催したり、商品開発も行なっていますが、そうした活動もとても楽しいです。

Dominique Corby メゾン・ド・ミナミ フレンチ割烹 ドミニク・コルビ

■熱意のない人とは仕事しない。店舗運営とスタッフのマネジメント

「トゥールダルジャン東京」では向学心のある熱心なスタッフに囲まれ、現在のお店ではスタッフとライブ感のある料理をされているとのこと。スタッフには恵まれていますか?

厳しいことですが、ここではっきり言っておきたいことがあります。今の若い人はどうなってしまったんだろう、と。これまで35、6年間料理人として仕事をしてきたけれど、最近の若手は意識がすごく低い。勉強したくない、意欲がない、人の話を聞かない。そんな若手が多いように思います。特に男性がそう。20数年の間に何が変わってしまったのでしょうね……。かつてはそんなことはなかったのに。

若いスタッフについて違和感を感じるのは、たとえばどんな場面ですか?

たとえば、今の若い人たちは、食材のことなどを勉強する時にまずインターネットで検索して情報を探しますよね。私が教えると「それはネットに載っていることと違います」と平気で言ってくる。知識をスマートフォンから得るのが当たり前だと思っているから、ピピっと簡単に調べてしまう。そしてその情報が一番正しいと思ってしまっている。変化はすごく大事だと思うけれど、そのコミュニケーションのスタンスは間違っていると思いますね。

私は勤勉で熱意のあるスタッフとしか仕事はやりたくない。自分の店で採用するなら少し経験のある女性が良いですね。女性の方が意欲的で勉強熱心だと感じることが最近多いのでね。やる気のある人にはこちらも教えがいがあります。

一緒に働いているスタッフのマネジメントはどの程度されていますか?

スタッフがたくさんいる大きな厨房の場合には、一人一人が決められた自分の持ち場分だけをこなす働き方になりますよね。あなたは鴨、あなたは栗、あなたはこれ、と。完全分業体制になると働く方も面白くないし、物足りない。私の今の店では、スタッフとコミュニケーションをとりながら食材が一番生きる調理法を考え、メニューを組み立てていくことが多いです。楽しいですよ。

ただ教えた通りに動くだけでは、お客様においしさは伝わりません。そのためにも、スタッフも仕事を楽しみ、本当においしいと思う気持ちを持たないとだめ。それができる環境や雰囲気を作るのが私の役目ですね。ですから、スタッフに対しては家族のように親しく、あたたかく、時には厳しく接します。

Dominique Corby メゾン・ド・ミナミ フレンチ割烹 ドミニク・コルビ

■情熱をもって、楽しく!未来の料理人に向けてのエール

料理人として大切にされていることを教えてください。

一人前になる上で大切なのは「余裕・自由・速さ」この3つだと思っています。

まず大切なのは「余裕」。余裕がないといい仕事はできませんよね。何があっても動じず、柔軟性があって、慌てないこと。そして何よりも自信があること。これはとても大事です。そのためにも経験豊富であることが求められます。

次に「自由」ですが、自由になるにはやはり経験が必要です。基礎や知識があってこそ、そこから逸脱できる。チャレンジするには、基盤が大切なのです。伝統的なフランス料理にはルールも多いですが、松茸など日本の食材を取り入れることに私は柔軟です。制約にとらわれたり、決めつけたりしませんからね。私の料理には自由があると思っています。

「速さ」は調理のスピードが大事だと言っているのではなく、新しいものやアイデアを取り入れる柔軟性やスピード感が大切だということです。私の店では、日本の食材について勉強するために来日したフランス人シェフを研修で受け入れています。後進に日本のことを教え、伝えるのも私の役目だと思っています。

では最後に、料理人を志す若者、そして現場で奮闘している若手料理人に対して応援メッセージをお願いします。

私のポリシーは「情熱をもって、楽しくやること」。

私は料理についての勉強には、努力を惜しみませんでした。料理に関連する様々な本を読みふけったり、レストランに食べに行ったり、毎日あらゆることをすべてやりました。料理に関することはすべて好きでしたからね。みなさんもそうあって欲しいと思います。

そして何より、自分が心から楽しむことが大切!お客様も、どんなに一流のサービスと料理があっても、堅苦しい気持ちで食べたら、おいしく味わえませんよね。時には冗談を交えたりしながら、リラックスしてもらうことは大事。楽しさは、料理においしさをプラスしてくれる魔法ですからね。

コルビさんが心の底からお料理を愛していらっしゃることが伝わってきます。日本の食文化の伝道師として、日本とフランスの架け橋として、今後のさらなるご活躍に期待しています。本日はお忙しいところ貴重なお話をたくさんありがとうございました。

(聞き手:齋藤 理、文:池水みと、写真:清水知成)

*取材後に「フレンチ割烹 ドミニク・コルビ」は移転し、2016年12月6日より新店舗にて、新店名「メゾン・ド・ミナミ フレンチ割烹 ドミニク・コルビ」として営業しています。料理人の手元が良く見える臨場感のある割烹スタイルは変えず、ゆったりしたカウンターとテーブル席の店内構成。コルビ氏による日仏を融合させたオリジナルメニューをいただくことができます。

メゾン・ド・ミナミ フレンチ割烹 ドミニク・コルビ 内観

メゾン・ド・ミナミ フレンチ割烹 ドミニク・コルビ 内観

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