「向いていない」を言い訳にせず、自分で決めた道を信じて進む

PONTE VECCHIO(ポンテ ベッキオ)
山根 大助

PONTE VECCHIO(ポンテ ベッキオ)山根大助

■残りの料理人人生をかけて、選んで良かったと思える業界にしていきたい。

独立の話になりましたが、山根さんのもとから独立して、成功されている方の特徴のようなものはありますか?

山根氏:
彼らの顔を思い浮かべてみると、皆、店にいた頃から抜きん出たところがあった。料理の腕とクリエイティブな才能、そして共通しているのは、みんな料理好きで料理バカ。こういう奴らは、センスもあるし、努力もするんですよ。

才能に関していえば、日頃から人に言われた通りやっているだけ、僕のアイデアを真似するだけだと、うまくいかない。ここで学んだことを真似したらそれなりの料理はできますし、ハコはお金を出したら作れます。でも、そういう人は、独立したい時に、「具体的にどんな商売をしたいの?」「誰に向けて?」と問うと、アイデアが出てこない。

作りたい料理があるのか、何を提供してお客さまに喜んでもらいたいのか。それを考えること。

新しい料理を作ってみなさいと言ったら、作れる子はまずいない。誰かの真似はできても、完全オリジナルの料理を作るって、簡単ではないのです。だから、新しい感覚を求めて、磨き続ける姿勢が大事。

それと、独立で成功するためには、すぐ結果を求めないこと。例えば、最初はテーブル1台ぐらいしかない店でもいい。そこで圧倒的な成果を出せばいい。

才能とエネルギーがあれば、お客さまは来る。ずっと満席が続くようになれば、最初の頃よりはお金を調達する力もつくし、資金も溜まっていく。持てるだけの信用を得て、次にステップアップしたらいい。

僕だって、この北浜の本店は2回移転・増床をした、3店舗目ですからね。他にも9店舗ぐらい展開して、畳んだ店もありますよ。最初から思い通りの規模の素敵な店なんて、できるわけないんです。

失敗も繰り返して。家を建てるのと似ていますね。何軒か経験して、初めて見えてくるものがたくさんあると。

山根氏:
経験を積んだ分、いただけるお金、使えるお金が変わってくる。僕だって、ステップアップする度に、お金はかかりましたよ。これまで何十億をかけたか分かりません。失敗も多かった。だから、決して稼げてませんし、個人的には本当に贅沢はしてない。質素なものです。

だからこそ、これからはちゃんと稼いでいかないと考えています。17年、18年と僕と一緒にやって来てくれる仲間が増えて来たから、ちゃんとその子たちにそれなりの給与と待遇を考えていきたいですしね。次のビジネスの構想もいろいろと考えています。

これまでポンテベッキオを30年、一生懸命やってきた僕だからこそできるものがあるし、今なら何をやってもいいんじゃないかなと。それを成功させて、これから料理業界を目指す人たちにも進むべき道を見せたい。

だってそうじゃないですか?イタリアンやフレンチの専門レストランを目指して、相当の努力をされた方が、最後に満足して料理人人生を終われないなんて、ダメだ。年をとったら路頭に迷ってしまうような職業だったら、みんなこの業界に来ないでしょう?

選ばれる職業になるため、変えていかないといけないところはいろいろありますね。

山根氏:
働いている人の事も考えていく必要もある。最近は、ハコやサービスにお金をかけない代わりに、料理を格安で提供するスタイルの店が流行っていますけど、とんでもないダンピングだと思っていますよ。一体誰のためになったのかと言いたい。

そもそもヨーロッパと比べて、日本の飲食店の価格は相対的にすごく安いんです。日本にいると、良心的な価格でやっているところも高く見えてしまう。僕らの店だって、ヨーロッパに比べたら安いものです。それでいて、日本は人件費が決して安くない。

そんな利益が生まれにくい状況で、どうやって働く人たちが満足いく環境を作れるのかと。どこかにしわ寄せが来ますよね。それが、業界の人材不足の問題、ひいては業界が発展できない部分につながっているんです。

どこかで変えていかないと。正当な価格で、納得して喜んでもらえる、そういう適正な基準がしっかり確立されないと、業界がダメになっていきます。

様々な飲食店経営者の方から、同様の話は聞いています。

山根氏:
そうじゃないと、これから人材の確保も難しいし、業界としての発展がない。安さを売りにして流行らせるんじゃなくて、「おいしくする努力をしようよ」と。

本来の競争って、どこが一番うまくて、値打ちのあるものを出しているかというところにあったはずなのに、「安ければ目をつむろう」になってしまっている。

巷に出回っている低価格のお店って、決していい肉を使っているわけでもなく、かと言って焼き方が素晴らしいわけでもない。

でも料理人なんだから、焼き方を工夫するか、仕入れに工夫するか、仕込みに工夫するか。おいしくすることにエネルギーを使おう、といいたい。

価格が安いという話題性だけでお客さまを呼んでいる、それは嫌だなと。安くする力と、おいしくする力って、エネルギーとしては一緒だと思うから、どうせならば、おいしくする方で努力しようよって。

今、考えている「Dステーキ」は、まさにそこが狙い。もっと料理で工夫して、柔らかくて美味しい、えっでもこの値段なの、値打ちあるね、ってものを作る。しかも利益にもつながるものをね。

そういうのを残りの時間賭けてやって、業界を変えるきっかけを作っていきたい。じゃないと、僕はこの料理人人生、このまま終われないんだ。

(聞き手:斎藤 理、文:田中 智子、写真:逢坂 憲吾)

PONTE VECCHIO(ポンテ ベッキオ)内観写真提供:ポンテベッキオ

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