妥協を許さない繊細な技と心。京都祇園で花開いた、硬派な江戸前の職人気質

鮨 まつもと
松本 大典

松本大典 鮨 まつもと

■正統派・江戸前鮨の文化を受け継ぎ守るということ。

鮨職人と料理人とで、何か違うと思われる部分はありますか?

松本氏:
今、僕がやっている仕事はほぼ「新ばし しみづ」で師匠に教えられた通りの仕事です。そして、「新ばし しみづ」は、1866年創業の浅草「美家古鮨」の流れを汲む「鶴八」の系譜にある鮨店ですから、その根底にずっと流れるのは正統派の江戸前の仕事。
ですから僕は「鮨職人」として、自分の個性を前面に強く押し出すのでなく、連綿と続いてきた伝統的な古典の技をしっかり感じてもらえる仕事がしたいと思っていますし、それが「鮨職人」としての仕事だと思います。

「鮨 ほしやま」の星山忠史氏はお弟子さんですが、星山さんも「鮨 まつもと」で学んだ仕事をそのまま受け継いだとおっしゃっていました。

松本氏:
星山が修業に来たのは店をはじめて2年くらい経ったころでした。弟子は今までに6~7人いますが、独立したのは星山だけです。来たときからこいつは気合が入ってるなと感じましたね。
彼は「俺が」という強い気持ちをもっていましたので、独立できたのだと思います。「俺が」という個を打ち出す強い気持ちと、謙虚に教わる気持ち…独立する為にはその二つが揃うことが必要だと思います。

独立して、もちろん繁盛することができればですが、普通のサラリーマン以上にお金も稼ぐことができるようにもなります。うちで修業してしっかりものになれば、稼げる鮨職人にさせられる自負はあります。
頑張った分、それに見合うお金を稼げるようになるはずです。一度得た技術は誰にも盗られません。
鮨職人の仕事はとても誇れる仕事ですし、お客さんを前に鮨を握れるのはすごく気持ちいいですよ。

鮨 まつもと 調理

■一切の手抜きなく仕込みする師匠の背中に教えられて。

鮨職人として、ひとつひとつの仕事を妥協なくやり続ける厳しい気持ちはどのように保たれているのでしょうか?

松本氏:
仕込みは毎日大変ですが、手を抜いて恥はかきたくないし、仕事を絶対にきっちりしたい。それは師匠の清水さんが、一切の手抜きなく、毎日仕込みする背中で教えてくれました。
ダメな仕事は絶対にダメだと言われたし、職人としての姿勢や心持ちを師匠が体現し、教えてくれたから、僕も同じようにやらないと気が済まないですね。
少しくらい簡略化してもお客様にはわからないのかもしれませんが、だからといって手を抜こうとはならないです。
お客様にばれるとか、ばれないとかそんなことは関係なく、手抜きすることが自分自身で気持ち悪い。
またお客様の中には、ちょっとした仕事の手抜きや気持ちの甘さを見抜く方がいらっしゃいます。その時の恥ずかしさったらないですから(笑)…いつでもどんな方の前でも、常に自分のベストを尽くしたいし、恥ずかしくない自分でいたいのです。

今後の夢などはありますか?

松本氏:
そうですねぇ。夢というわけではなく、いまのこの場所も気に入っていますし、お客さんにも大事にしてもらっていますから、すぐにどうこうというわけでもないんですが、イメージとして老後に鎌倉の小高い丘に小さな一戸建てを買ってお店を開けたらいいなと思っています。漠然となんですけどね。

素敵ですね!こちらのお店を見つけられたときのように、トントン拍子に進む時がくるかもしれないですよね。
最後に鮨職人を目指す若い方へのメッセージをお願いします。

松本氏:
味覚も技術もやり続ければ誰でもいずれは身に付きますが、修業で違ってくるのが、仕事に対する心のあり方です。
いまでは様々な事が手軽に、簡単に得られることがよい。という風潮があるように思いますが、簡単に得られるものにそこまでの価値があるとは思いません。
修業中はたしかに辛いかもしれませんが、鮨職人としての人生全体で考えれば、僅かな期間でしかありません。
自分がどうしたいのか、どうなりたいのかしっかり見定め、それが鮨職人の道であるなら自信を持って迷うことなく力強く歩んで欲しいと思います。

(聞き手:市原孝志 文:池側恵子 写真:逢坂憲吾)

鮨 まつもと 外観

鮨 まつもと

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