料理をモダンに表現すること、モダンな世界の流れの中に新しい料理を打ち出していくこと

Restaurant Le Cinq(レストラン ルサンク)
Christian Le Squer(クリスチャン・ル=スケー)

Christian Le Squer Restaurant Le Cinq(レストラン ルサンクPhoto by Jean Claude Amiel

■自分のしたい職業で良いパフォーマンスを披露し、その職業でのすごい奴になること

料理人は合わなくて辞めてしまう人も多い職業ですよね。

ル=スケー氏:
そうですね。でも、それも一つの選択だと思います。今と昔が違うのは、職業を替える権利があるということです。昔は職業を替えにくかった。若い料理人は、この職業が気に入らなかったらもちろん替えていい、誰にも替える権利があります。昔は子どもの学力に応じて親が子の職業を決めていました。

今日、子どもたちは自分の人生を自分で決めます。自分の職業を自分で選びとります。自分のしたい職業で良いパフォーマンスを披露しなさい、その職業でのすごい奴になりなさいと若い人には言っています。もし自分らしさが出ないようであれば、怖がらずに場所を移ることです。これはとても大切なことです。

どのような心持ちで、料理人という職業に向き合っていらっしゃいますか?

ル=スケー氏:
私はいつでもこの職業をいきいきと味わってきました。朝、私は職場に来ると嬉しいし、毎日14時間常にポジティブな気持ちで働けます。私はこの仕事が大好きです。お客さんとの関わりも好きです。毎朝約束が立て続けですが、私に会いに来る人が私を成長させてくれていますし、外から来た人から刺激を受けることを私は欲しています。そして私は何に関しても完璧主義者です。届いた食材から食べ方まで、撮られる写真まで気にします。モダンさは、文化から培われます。

Christian Le Squer Restaurant Le Cinq(レストラン ルサンク)内観

■ムーヴメントを絶やすことなく繰り出すこと。動き続けること。

プロフェッショナルとしての哲学はありますか。

ル=スケー氏:
怠けてはいけないということです。ムーヴメントを絶やすことなく繰り出すこと。動き続けたからこそ私は長く第一線にいられているのかもしれません。今年で54才になりますが、まだ第一線で活動しています。

50歳になってもプロとして憧れられるような仕事をしていない人はどこかで怠けてきたのだと思います。人に任せてしまったか、もしかしたら朝は走っていても夜は走るのをやめてしまっていたのかもしれません。

私は朝も夜もキッチンに立っています。この職業は、一生懸命仕事をしないと生き残ることができないものです。
アラン・デュカス(Alain Ducasse)もジョエル・ロブション(Joel Robuchon)もたくさん仕事している人たちです。

8時15分には私は店にいます。夜も23時までいます。昼のサービス後に1時間から1時間半スポーツをします。

私の平日はそういう流れです。そして朝出勤したときにはもう頭はアイデアでいっぱいです、1000個も料理が浮かんでいます。私はエネルギッシュな人間です。

15年間走り続けるとはそういうことだと思います。現代的な料理を作ること、本当に味わいのあるものを作ること、感動を生み出すこととはそういうことです。

難しい時をどのように乗り越えましたか?

ル=スケー氏:
難しい時期などありません。ストレスがあったとしても、それは日常生活の中には必ずあることです。問題が起きても私はすぐに解決します。解決しないと思考の邪魔になるからです。11時に問題が起きたとしたら、11時15分には解決しています。ストレスを増やすようなことはしません。

人生で怖いことはただ1つ、良い料理が生まれないことです。クリエーションできないこと。これは怖いです。それを除けば何も大変なこと難しいことなどありません。

いつも私はアイデアに溢れています。けれどチームにとっては大変なことだと思います。私の要求が多いからです。それは、チームのメンバーに老いてほしくない、モダンでい続けて欲しいという願いでもあります。

確かに、スタッフの方々は大変ですね(笑)

ル=スケー氏:
ええ(笑)緻密なことを要求するので、私はスタッフにうんざりされています。けれど、12ヶ月で三つ星を獲ることができたのはその緻密さがあったからだと思います。

三つ星は難しいですよ。
「エリック・フレション(Eric Frechon)」は三つ星を獲るのに10年かけました。

私がサインした契約書には「1年で三つ星を獲れなければクビ」だと書いてありました。そして、契約通り12ヶ月で獲得することができました。その後、私は15年三つ星を維持しています。

私は怖くなんかなかったですよ。今の世の中、経済はそういうものです。

今この世界がどうなっていて何を求めているかに、私たちの仕事も評価も直結しているのです。どれだけ高名なシェフでも、3年でいなくなるかもしれない、10年で消えるかもしれない、その中で走っています。

今フランスは底にいます。けれど怖くありませんよ、私は。広い世界を常に見ているからです。

Christian Le Squer Restaurant Le Cinq(レストラン ルサンク)

■料理人として、人間として。「人生を楽しむ」という生き方。

モチベーションの源となっているものは何ですか。

ル=スケー氏:
この職業が好きなんです。私を取り巻いている人たちのことが好きなんです。私の職業への愛はそれなんです。私は料理にいつも夢中ですし、特に、若手たちに伴走したいんです。若い人たちがモダンな考え方をするように成長していってほしい。

私はコンクールには批判的な意見です。パッサール(Alain Passard:三つ星Arpègeのシェフ)はコンクールに参加してきたような人よりもずっとモダンです。なぜなら、彼は新しい味を生み出しているから。コンクールに参加するよりも、新しい味を生み出す方が大事です。調香師と同じですね。

他にない特別なものを生み出す方が、コンクールのような、4時間もミクロな環境で戦うよりもいい。私が思う料理人にとって大切なこととは、今までになかった味を生み出すこと。身近な食材で、規模の小さな生産者の作ったもので。

私が若い料理人に言っているのはそういうことです。アーティザナルな料理をする方が、コンクールに出品するよりも私の価値観に合っています。1つの大会に何時間もかけるよりも、市場を見に行く、美術館を見に行く方が明日の世の中、明日の経済に合っています。大会で成功するかどうかで未来は決まりません。新しい味、持続可能な発展、そういうものに意義を感じます。

料理人として幸せな瞬間はどんな時ですか。

ル=スケー氏:
お客さんが幸せそうなとき、私のスタッフが私と働いて幸せそうなとき。そんなと彼らを幸せを分かち合う時です。ずっと慕ってくれることが幸せです。

「ルドワイヤン」の常連客は皆ここに来ています。この週末は「カフェ・ド・ラ・ペ」時代の広報のディナーに招待されて行ってきました。

このような長いつながり、お客さんも含めいい友達ができることはとても幸せです。誠実に接していたら、彼らも私に同じものをくれます。分かち合いです。幸せだったら、自分を支えてくれている人に幸せを分けることです。

自分だけ持っていても何の役にも立ちません。私はブルターニュの小さな村の出身ですが、村では皆が幸せです。誰も不幸な人を不幸なままにしないで助け合うからです。お腹が空いている人がいたら食事を分けます。問題があったらみんなで助けます。同じです。

スタッフが困っていたら一緒に解決しようとします。いいことがあったらまわりに分けないと。海外のイベントに呼ばれたら、日本だったら日本に行きたい人を連れて行きます。ニューヨークに行くときはニューヨークに行きたい人と行きます。教養を養い、インターナショナルな世界を見る機会を分かち合います。

スポーツもしますし、結局は普通の人生を送りたいのです、バランスがとれていて、モダンな男性とは言わないまでも、現代を生きる男性らしい生き方をしたい。毎日仕事の休憩中、昼のサービスの後はスポーツをしています。仕事、お客さんのおかげで私は常に動きのある日々を送っています。刺激が多い「façon de vie(生き方)」をしています。

モダンとは、精神が開かれていることです。モダンさは、文化から培われます。
私がトレンドに乗れているのは、美術館、建築、写真、手工芸、全てが私の料理につながっているからです。以前は、特にガストロノミーの人に注目されていましたが、今や私は一般の人に広く知られています。

「façon de vie(生き方)」についてもっと教えてください。

ル=スケー氏:
水泳も、ハイキングも、海辺も、美術館も、好きなものはたくさんです。どのようなひとときも好きです。どんなひとときも輝いていると思います。今を生きるのが好きなのです。

私は時間を決めていません。必要なものに必要な時間を、人と向き合う時間をとります。若い料理人は話したいことがあればいつでも私と話すことができます。私は時間をいつも気にしないことにしています。なので。唯一の問題は奥さんと過ごす週末が短すぎることです。

たっぷり眠ること、何もしないひとときも好きです。生きること、人生自体がとても好きなんです。夢中です。とても貴重に思います。人を幸せにするのが好きです。常につながって、分け合って、与え合って、そういうのが好きなんです。

夢は何ですか。

ル=スケー氏:
私の夢は日本のレストランのコンサルティングをすることです。

他にもありますよね?(笑)

ル=スケー氏:
それだけ書いてください(笑)。日本の文化が大好きですし、日本のレストランに私のフランスの文化を伝えに行きたいです。ローカルの食材だけを使って、一緒に星を獲りたいです。

(インタビュー・文:安發明子、写真:Hiroki TAGMA(料理写真はLe Cinq提供))

Christian Le Squer Restaurant Le Cinq(レストラン ルサンク)内観

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