料理をモダンに表現すること、モダンな世界の流れの中に新しい料理を打ち出していくこと

Restaurant Le Cinq(レストラン ルサンク)
Christian Le Squer(クリスチャン・ル=スケー)

Christian Le Squer Restaurant Le Cinq(レストラン ルサンク

■グランシェフはオーケストラの指揮者と同じ。お客さんをもてなす最高のハーモニーを作り出す。

グランシェフやオーナーシェフとして気を付けなければいけないことは何ですか?

ル=スケー氏:
料理人としての役回りにとどまることなく、どのような戦略をたてるのか、意思決定はどのようにするのかということまで考えていなければならない、ということです。サッカーチームのトレーナーと同じで、チームのパフォーマンス向上や、人材を育てる 能力が求められます。建築家と同じで、昔と同じことをするのではなく、チーム全員を、モダンさを生み出すチームに育てなければなりません。 オーケストラの指揮者のように、サービスともパティシエともブーランジェとも連携して動き、お客さんをハーモニーの中で迎えるのです。グランシェフ(総料理長)と言われている人はそのような人物のことを言うと思います。

シェフの仕事とは、料理の仕上がりがいいかどうかを確認するようなイメージではありません。料理をモダンに表現すること、モダンな世界の流れの中に新しい料理を打ち出していくことです。

「ルドワイヤン」でしていたのと同じようなアーティザナルな料理を、パラスのきらびやかな世界で披露したのです。「フォーシーズンズ」はクリスチャン・ル=スケーの名前をかき消して演出することも十分できたはずです。けれど、私の名前はアラン・デュカス(Alain Ducasse)と同じように扱われています。「フォーシーズンズ」にル=スケーがいる、「フォーシーズンズ」の料理はル=スケーが作っているということは誰もが知っていることです。ホテルに雇われるとしても、自分の名前をサインとして出せるかどうか、大きな違いがあります。

周囲の期待の中で、結果を出さなければならないのは大変ですね。

ル=スケー氏:
いえいえ、今日の料理人にとってこれくらい求められるのはごく普通のことです。
「ジョルジュ=サンク」に来たとき、就業契約書に「一年以内に三つ星を獲ること」と書かれていましたからね。

更に、レストランに留まらない活動もされていますよね。

ル=スケー氏:
はい。フランス料理の継承についても興味を持っていて、味覚の授業をしに今年日本に行きました。また、宇治の抹茶のアンバサダーを務めているので、抹茶を使ったフランス料理を作ったりもしています。こういった活動が明日の文化を作ると考えています。料理や味は文化です。継承していかなければという思いがあります。

他にも癌と食に関する研究にも参加していますし、慈善活動にも広く関心があります。

コンサルティングとしては有名ブランドにアドバイスする仕事をしています。例えばヴィッテル(Vittel)という水のアンバサダーを務めています。他の企業の力になるのは面白いですね。だからこそ、「フォーシーズンズ」と専属契約は結んでいません。もう15年も三つ星を維持しゴー・ミヨ(Gault&Millau有名レストランガイド)で最高ランクの5トックを持っています。私だけではなく、今フランスの有名なシェフは皆レストラン外で広く活躍しています。

Christian Le Squer Restaurant Le Cinq(レストラン ルサンク

Photo by Jean Claude Amiel

■話題の新作を生み出し続ける秘密は、リサーチ&開発チームにあり

どのようなチーム構成で仕事をしていますか。

ル=スケー氏:
このホテル「ジョルジュ=サンク」にはシェフが3人いて、「ロランジュリー」(L’orangerie)と「ル・ジョルジュ(Le George)」には別のシェフがいます。私が担当しているのは三つ星と バンケ(Banquet、 サロンでのパーティー料理のこと)だけです。三つ星ではサービスごとに料理人が16人、パティシエが4人います。

昼と夜では別のチームです。朝来るチームと、遅く出勤するチームがあるのです。朝から夜まで通しで働かせることはしません。他にはルドワイヤン時代からずっとリサーチ&開発チームを置いており、そこでは調香師やデザイナーと同じように、毎日新作の創作のみをしています。リサーチ&開発チームは常に新しい料理を提案するので、SNSでもとてもアクティブに発信できますし、レストランでも新しいものをタイミング良く発信していけます。

彼らが一度料理や味を創り上げると、全てコード化します。パソコンに詳細まで入力して再現可能にします。コスメと同じですね。シワ消しのクリームは調査や研究を積み重ねて開発されているでしょう。それと同じことです。

良いものを作るために大切にしていることは何ですか?

ル=スケー氏:
食材です。100ユーロの料理を作るのに最高の食材を使わなければならないのは当然のことです。最高であって当然です。改めて言うことでもありません。良い生地でないとエレガントな服は作れないのと同じです。私たちには、幸運なことにフランスの素晴らしいテロワール(大地)があります。私の仕事はその食材を使って、これまで食べたことがないような味を創り出すことです。味を合わせ、個性的な、ここでしか食べられない味を作っているのです。

シェフにとって、料理の中で一番大事なのはやはり味ですか?

ル=スケー氏:
そうです。香水と同じです。ポム・トゥルネ(Pommes de terre tournées、面取り)がきれいにできているかどうかなんてどうだっていい。私はジャガイモが美味しければいいんです。ジャガイモにどれだけ細かい技術が施されているかなどは重要ではありません。食べて「うわ、なんてことだ、こんなに美味しい。こんなに美味しいじゃがいもを食べたのはいつぶりだろう」というのがいいんです。

Christian Le Squer Restaurant Le Cinq(レストラン ルサンク)内観

Restaurant Le Cinq(レストラン ルサンク)

お問い合わせ
+33 1 49 52 71 54
アクセス
31 Avenue George V, 75008 Paris France
Four Seasons George V Hotel Paris
George V駅(メトロ1番線)
営業時間
12:30-14:30、19:00-22:00
定休日
なし