挫折の連続から掴んだ世界一

L'Ambroisie(ランブロワジー)
吉冨 力良

◼感動を与えられる仕事がしたいと料理の道へ

熊本県ご出身で、料理を好きになった原点は、幼少期にあったとか。

吉冨氏:
はい。生まれ育ったのは熊本県上益城郡甲佐町という自然豊かな町で、実家は兼業農家でした。母は農協で働き、父は土木関係の仕事をしておりました。
その傍らで仕事が終わってから、田や畑に行って、米や野菜、大豆を作っていました。
学校が終わってから農作業を手伝ったりすることもありました。小さい頃から家の手伝いをして誰かに喜んでもらえるのが嬉しかったですし、両親が共働きだったのもあり、料理も子どもの頃から作っていて、ずっと料理人になりたいという思いはありました。昔は土曜日に半日だけ学校があったのですが、両親が働いていますから家に帰ってもお昼ご飯がありません。小学校低学年の頃から卵焼きを作ったり、高学年になったら出汁を引いて味噌汁を作ったりと料理は常に身近にありました。

中学、高校と進んで進路を考える際に、将来は人に喜んでもらえて、感動を与えられるような仕事をしたいと思いました。人々に感動を与えられる仕事は俳優や歌手など色々ありますが、自分には才能もないし向いていないと思いました。でも、料理でなら自分でも人を感動させることができるのではないかと思ったのです。高校を卒業して福岡の調理の専門学校に1年間だけ通わせてもらいました。本当は大阪や東京の有名な料理専門学校に行きたかったのですが、授業料等が高くてあきらめました。家庭の事情も知っていましたし、自分は三男でしたからね。

実際に専門学校に行かれて、どうでしたか?

吉冨氏:
専門学校では夏休みにかならずどこかで10日間程の実地研修をすることになっていて、旅費は自分で出さなくては行けないのですが、一番厳しいところを見たいと思い東京の有名なフランス料理店で研修を受けさせていただくことになりました。

厨房にすら入れてもらえず、洗い物や掃除をして日々が過ぎていきました。ダスターのたたみ方や置く場所も決まっておりましたし、コックコートの着方から違いました。常に清潔な仕事を意識する等、プロの厳しさを経験しました。

研修が始まって3日経ったある日、厨房に入る際も衛生面を考えて手洗いはもちろんのこと、靴の除菌やうがいをしなくてはならないのですが、うがいをしたときにまだ少しだけコップに残っていたうがい薬を捨ててしまいました。それをたまたまシェフが見ていて「何をしているんだ」と激しく怒られました。今考えるとこういった製品にも作った人の気持ちが入っているからぞんざいに扱うな、と言いたかったのではないかと思います。

料理学校に入ってわずか3ヶ月、できる気になっていたんでしょうね。何もできないくせに負けたくない気持ちが強すぎて、なんでもできますという態度が目についたのかもしれません。

◼プロの洗礼を受けた厳しい修業時代

東京に来てみて、そのまま東京で働こうとは思わなかったのですか?

吉冨氏:
料理学校の先生から「やる気があるのだから、東京に行くように」と勧められましたが、福岡のレストランに就職することにしました。当時の自分は東京に怖気づいていた部分があったんだと思います。

プロとなって、初めての仕事はいかがだったのでしょうか?

吉冨氏:
要領も悪く、言われたことを言われた通りにやらないため生意気だったんでしょう。先輩やシェフから怒られてばかりで……。頭から氷水をかけられたり、蹴られ殴られの日々でした。厨房に入れてもらえなかったのも辛かったです。サービスの担当になり4ヶ月ほど働かせていただきましたが、ノイローゼ気味になり退職しました。
逃げるように福岡を後にして、熊本に戻り、1〜2ヶ月自分の部屋に引きこもっていました。

とはいえ、そのまま家に引きこもり無職になるのは嫌でした。専門学校に相談して再就職先を紹介していただこうと思ったのですが、最初の就職先を逃げるように辞めた経緯もありましたからね。当時のフランス料理担当の先生からは冷たくあしらわれてしまいました。

ハローワークや求人案内等で仕事を探すのですが、料理以外の仕事にどうしても興味が持てない。
「自分には料理の仕事しかない。」そう思いながら熊本の街を歩いていると、一軒のフランス料理店を見つけました。何気なく中を覗いていると、お店のマダムが気付いてシェフを紹介してくださいました。
「もし、興味があるならうちに来てみるか?」とシェフから優しく声をかけていただいたのです。この頃私は20歳になったばかりの頃でした。シェフからは厳しく指導されましたが、仕事終わりに食事に連れて行ってくれたりと優しく親身になって育ててくださったと思います。こちらでは2年程お世話になりました。

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