カウンターに立って生まれた覚悟。お客さまに喜んで頂く為に料理を作る

三科 惇

蓮 三科惇

■料理長になり考えた。師匠のようにお客さんを喜ばせるにはどうすればいいのか

煮方としてどのように修業されたのですか?

2008年に「虎白」がオープンして小泉のもとで働き、2009年に「蓮」に異動して、「石かわ」時代から7年間煮方を務めました。煮方の仕事は料理長が求める味を作ること。それができるようになってきたら、メニューの提案も聞いてもらえました。空き時間に作ってみて、「いかがですか?」と差し出すわけです。

勝率は?

採用はなかなかされませんでした。コースには全体の構成があって、バランスを崩さないように1、2品を変えるというのは難題なんです。それでも提案は快く聞いてくれましたし、いいものはコースに組み入れてもらえましたから、励みになりました。

「蓮」の料理長に就任されたのは30歳の時。それまでと仕事への向き合い方は変わりましたか?

「蓮」にはオープンした時からいましたが、裏での仕事が忙しかったので、料理長としてカウンターに出るようになって気づかされたことは多かったですね。お客さまがお帰りになる時の表情が、おやっさんや小泉さんのもとで働いていた時に見た表情とは違う気がして。料理を楽しんではくださっているのですが、喜びの度合いが少し薄いなと感じたんです。おやっさんたちのようにお客さんに喜んでいただきたい、もっと自分にできることがあるんじゃないかと思いました。

本当にお客さまが喜んだ時にどんな表情をするのかを「石かわ」や「虎白」で見ていらっしゃったから、「何かが違う」と気づけたんですね。

はい。何をどうすればいいのかはわからなかったものの、私にカウンターに出た経験がなく、お客さまとのやりとりになれていなかったので、接客に至らないところがあることは課題として感じていて。日々お客さまの様子をきちんと見ることを心がけつつ、休みの日にお寿司屋さんで食事をして店主のカウンターでの所作を観察し、会話の間や言葉づかいを学んだりもしました。

そのうちにお客さまの食事の進み具合に合わせて料理をお出ししたり、会話から料理のお好みを察したりといったことが自然とできるようになって。そのころから、お客さまをお見送りする際に「喜んでいただけてよかった」と感じられる日が増えていきましたね。

カウンター中心のお店はとくに、お客さまの反応がダイレクトに伝わりますよね。

作ったものへの反応をすぐ感じられるというのは、やはり励みになります。裏で仕事をしていた時は、「お客さまのために」とわかってはいても、ともすると自己表現に意識が傾きがちだったのですが、カウンターでお客さまの喜ぶお顔を見ると、「自分が」という気持ちがすっと消えていくような感覚がありました。口はばったいのですが、料理長としてカウンターに立つようになって、「お客さまに喜んでいただくために仕事をする」という覚悟のようなものが改めて生まれたように思います。

蓮

■お客さまは料理だけでなく、店の空間を味わうために来てくれる

私ごとですが、先日、妻の誕生日に「蓮」で食事をさせていただきました。「蓮」の料理は、けっして派手ではないですが、味や食感が強く印象に残っています。

ありがとうございます。できるだけ食材を組み合わせず、シンプルで懐かしいけれど「どこかが違うよ」と感じていただける料理を目指しているので、うれしいです。複雑な構成の料理を「これは何だろう?」と考えながら食べるのも楽しいものですが、うちの料理は真逆。ひと目で何かがわかる料理なので、考えなくていい分、リラックスして自然体で食べていただけるのではと思います。

落ち着いてくつろげるためか、年配のお客さまも多いですね。

お客さまの中心層は40代後半から60代です。僕よりも若いお客さまがいらっしゃることはめったにないです(笑)。

三科さんは現在、32歳。ミシュランで星も獲得しているお店を若くして切り盛りすることに難しさは感じませんでしたか?

年齢はあまり意識しませんでした。むしろ若いということで応援をしてくださるお客さまが多く、恵まれていると感じています。お客さまは僕よりも人生経験も豊富で、料理についてもよくご存知ですが、お出ししたものに対してその場で批評されたりはしません。ただ、こちらからうかがうと、食べてお感じになったことをおっしゃってくださることはありますし、お食事をされているときの表情から判断できます。お客さまからはたくさんのことを教えていただいていてありがたいですね。

「蓮」は三科さん以外の3人のスタッフも20代から30代前半でお若いのですが、行き届いた接客が印象的でした。

料理の質はもちろん大事なのですが、お客さまは料理だけでなく店の空間を味わいに来てくださるので、きちんとした接客というのはとても大事だと考えています。基本的なマナーは当然スタッフに教えますよ。感覚的なことは見て学ぶしかないところはありますが、コートなどのお召し物の扱い方や着せ方といったことをスタッフ同士で練習をしたりもします。

確かに、スタッフがコートをすっと上手に袖に通してくれるお店は印象が違いますよね。とても気持ちが良いです(笑)。

細部の印象が良いと、お客さまを大事に思う気持ちも伝わりやすくなると思うんです。とくに「蓮」のスタッフは男性ばかりなので、接客ががさつにならないよう気をつけています。

僕自身は、格式のある空間や接客とは何かを学ぶために少し高級な洋服屋さんに行って雰囲気を味わってみたり、高級レストランで食事をすることもあります。お客さまの目線を体感して初めて自分の店の改善すべき点に気づくこともあるので、飲食の仕事をするには、プライベートでいろいろな場を経験することも大切かなと思いますね。

蓮

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