へストン・ブルメンタールとともに、世界をつかむ。盟友との19年間で見つけた、「チームを共鳴させるため」に必要なこと。

Dinner by Heston Blumenthal
アシュレイ・パーマー ワッツ(Ashley Palmer-Watts)

■料理は自分のちっぽけな世界から抜け出して世界を見せてくれる存在

どのように料理の仕事に入られたのですか?

アシュレイ:
私が生まれ育ったのは、イギリス南西部、ドーセット州にある、人口1000人ほどの小さな街です。わたしが料理のキャリアをスタートさせたのは、13歳の時、そこにあるプティ・カナールという、フレンチのレストランでした。
父は技術図面を描く仕事をしていて、母は救急車の運転手でしたが、両親は離婚して、それはまだ子どもだった私にとって、とてもきつい体験でした。

このレストランは、カナダ人のシェフと、イギリス人の奥さんが切り盛りする小さなお店でしたが、ビブ・グルマンの前身であるRedMを受賞して、味は確かでした。そして、何よりも、店に一歩足を踏み入れたら、イギリスの片田舎から、まるで都会的な北米の全く違った世界にワープしたような、そんな感じがして、小さな田舎町独特の息苦しさを忘れることができました。だから、毎日スクールバスを降りたら、すぐレストランに向かっていたのです。

仕事自体も魅力的だったのですか?

アシュレイ:
最初は皿洗いをしていたのですが、シェフが2人しかいない、小さなレストランなので徐々に料理を任せてもらえるようになり、16歳の頃には、フルタイムで働くようになりました。シェフがカナダ人ということもあって、アジアの影響も受けた、ルールにこだわらないフレンチでした。また、小さな店だったのですが、フランス、アメリカ、スペイン、スウェーデンなど、海外でのコラボレーションなども積極的に行っていて、そこにも一緒に連れて行ってもらいました。チャーリー・パーマー、ウルフギャング・パック、アリス・ウォータースなど、これまで読んできた料理本の著者のいる世界で料理をすることができました。

料理を通して、広い世界の、色々な人に会える。それは、自分にとっても大きな発見でした。料理の世界を通して、素晴らしい人生が開けると感じ、この仕事を一生の仕事にしようと思いました。

■へストン・ブルメンタールとの衝撃の出会い

そんな中、へストン・ブルメンタール氏とはどのようにお会いになったのですか?

アシュレイ:
私の20歳の誕生日に、プティ・カナールの他のスタッフと共に、食事に行ったのがファット・ダックとの出会いです。

食べてみたら、上質な素材を高い技術で仕上げているだけでなく、骨太でユニーク、オリジナルの味わいがある。当時から時代の最先端の料理を提供していました。味の組み合わせ一つ取っても、テクニックひとつとっても、これまでに見たことのないような、料理の境界線を押し上げるような料理でした。さらに、料理だけではなく、歴史家や心理学者、科学者が一緒になって料理を作り上げている、その空間自体が魔法のように素晴らしくて、惹きつけられたのです。うまく説明できませんが、ここで働かなくてはならない、と感じて、へストンに「ここで働きたい」と伝えました。

ちょうどその頃、シェフ夫妻がカナダに帰るために、プティ・カナールを閉めることになったのです。当時ロンドンで二つ星だった、ゴードン・ラムゼイのオーバンジー(Aubergine)や、そのゴードン・ラムゼイやマルコ・ピエールホワイトを生み出したル・ガヴローシュ(Le Gavroche)など、複数のミシュラン星付きレストランからも仕事のオファーをいただきました。だけれども、私は他の所ではなく、絶対にファット・ダックで働きたかった。なので、そのオファーを全て断って、へストンからの連絡を待ちました。

そしてすぐ働き始めることができたんですか?

アシュレイ:
プティ・カナールの最後の日、ディナーの営業を終えて深夜2時頃に家に帰ってくると、部屋に「へストンから留守電が入っている」とメモが残っていました。留守電を聞くと、「来てくれ、君が必要だ。仕事がある」と入っていたんです。大喜びで翌日行ってみると、前任者は辞意を示していたものの辞めていなかったのです。おかげで、2〜3ヶ月間は、プティ・カナール時代の同僚のクレソンの畑でクレソンを摘んで働くことになりましたけれどね(笑)。

Dinner by Heston Blumenthal

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定休日
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