L’ASSIETTE CHAMPENOISE(ラシエット・シャンプノワーズ)Arnaud Lallement(アルノー・ラルマン)

愛するシャンパーニュの地で家族経営のメゾンを守り抜き、レストランが本来あるべき姿を示してくれる三つ星シェフ

L’ASSIETTE CHAMPENOISE(ラシエット・シャンプノワーズ)
Arnaud Lallement(アルノー・ラルマン)

L’ASSIETTE CHAMPENOISE(ラシエット・シャンプノワーズ)Arnaud Lallement(アルノー・ラルマン)

■シェフへの道。早すぎる父の死と事業承継(1974-2002)

修業先はどのように決めましたか。お父上からの影響が少なからずあったのではないでしょうか。

ラルマン氏:
私が生まれて1年後の1975年に父が創業したこのメゾンに、私が修業を終えて戻ってきたのは1997年です。戻ってきたことと父の死とは一切関係がありません。シェフになることも、どこで修業するかも、全て自分自身で決めたことですし、このことも含めて私の決断について父からの干渉は一切ありませんでした。
ベースの部分は父が築いたことは確かですが、父が私の将来を選んだわけではありません。私がやりたいようにさせてくれました。2000年にこのメゾンでヘッドシェフに就任しました。その後、2002年に50歳で父が亡くなり、メゾン全体の責任者となりましたが、こんなに早く引き継ぐとは正直思ってもいませんでした。
修業時代は、ロジャー・ベルジェ(Roger Vergé)、ミシェル・ゲラール(Michel Gérard)、アラン・シャペル(Alain Chapel)という偉大なシェフ3人の元で研修する機会に恵まれました。彼らの元で修業した理由は、3つの地域で、それぞれに違った料理を作る偉大なシェフたちのもとで働きたかったからです。それぞれのシェフのアプローチを理解することこそが料理の修業だと考えているからです。

どのような子供時代を過ごしましたか、子供の頃からシェフになると決めていたのですか。

ラルマン氏:
両親はこの地に移転する前からランス郊外でレストランの「l’Assiette Champenoise(ラシエット・シャンプノワーズ)」を営んでいました。母によると、ママやパパといった言葉を覚えるより先に、魚や野菜といった食材の名前を覚え始めていたようです。
ランス郊外のタンクーにあるホテルレストランを購入し引っ越してきてからは、私の寝室は厨房の真上でしたから、朝早くから厨房で皆が働く音が聞こえていました。
両親はこのラシエット・シャンプノワーズの経営で忙しかったので、いつも日曜にお越しになる常連のお客様に自転車の乗り方を教えてもらったくらいです。
文字が読めるようになる前からミシュランガイドやゴーミヨを見て言葉を覚えていきました。シェフになることは5歳の時から決めていました。この環境ですから、自然な成り行きでした。

L’ASSIETTE CHAMPENOISE(ラシエット・シャンプノワーズ)Arnaud Lallement(アルノー・ラルマン)&Staff

家族経営でここまでこられているようですね。奥様と妹さんもご活躍されていらっしゃるとお聞きしました。

ラルマン氏:
我々にとって家族経営という側面は極めて重要であり、このメゾンの魂なのです。父が50歳の若さでこの世を去った当時、妹のメラニーは当時23歳で、母も健在でした。
2001年にはかつて一度取得したものの失ってしまった一つ星に返り咲き、2005年には二つ星を、2014年には三つ星を獲得することができました。妻と妹とは三つ星獲得前から一緒に働いてきました。三つ星獲得については、皆で実現した成功だと思っています。

三つ星獲得をしてからは外部環境に大きな変化がありました。これまで一度も来ようとしなかったジャーナリストが訪れたり、色々な人からの多種多様な誘いが毎日のようにあります。しかし、私たちはそういったことにあまり興味がなく、これまで通りの経営を続けています。

もしここに生まれておらず、料理人になっていなかったら、どの職業を選んでいたと思いますか?

ラルマン氏:
どうでしょう。今まで考えたことがなかったです。料理人でなければ、ワイン生産者になりワイン造りの道を歩んでいたでしょう。もちろんシャンパーニュの造り手です。ワイン畑がとても好きだからです。
これまでずっと「ラシエット・シャンプノワーズ」の経営に全精力を注ぎ続けているので、他の道は考えたこともないというのが実際のところです。

長男のブリスさんが料理コンクールに出場し、今日現在最終選考まで残っていますね。二人の息子さんたちの将来についてはどのようにお考えですか?

ラルマン氏:
ブリスが料理業界に入ることを決めたことは良かったと思いますが、不思議な感じがします。私からは彼に一切干渉していません。彼は全く自分一人で決断したのです。これは本当にとても良かったと思っています。
ブリスとマテオが今後選ぶ道については、成り行き次第でしょうね。彼らの決断について私の方から干渉することは今後もありません。私自身がそうしたように、彼ら自身が自分で選択すべきことだからです。
この道に進むことは息子たち自身が望んで決めたことで、これはとても重要なことです。人生は負わされた義務を果たすものでは無く、自分自身で選択した人生を全うすべきだと考えています。
事業承継についてはそんなに困難なことだとは考えていません。息子たちはこの場所で生まれ育ち、メゾンの全てを知っています。これは最も大事なことです。その他のノウハウのようなものは一緒に働くうちに体得してくれるでしょう。

L’ASSIETTE CHAMPENOISE(ラシエット・シャンプノワーズ)外観

■レストランを進化させ続けてきたシェフの哲学と三つ星獲得 (2002−2014)

「本物を食べる」というご自身の考えについてお話しください。

ラルマン氏:
現代人は食に無関心です。私にとって「本物を食べる」という考え方は何もガストロノミーに限ったことではありません。新鮮で、美味しく、心地よいものを食べるというシンプルなことなのです。マルシェ(市場)に行き、小規模の職人達と出会い、大地で育まれた自然の素材を探すことが大事です。

ガストロノミーレストランまたは星つきレストランの顧客の変容についてどう思われますか。

ラルマン氏:
お客様の顔ぶれは昔と変わりませんが、時の経過と共にお客様は進化しているのが事実だと思います。あらゆるものが進化しているからです。40年前とは興味・関心も変わっておりますし、聞く音楽も違います。30年前と食べるものも違っています。
これは人生の発展というごく当たり前のことです。星の数に限らず、ガストロノミーレストランというものはいつまでも同じところにとどまってはいけないのです。30年前と同じことをやっていてはいけないのです。レストランはその時代時代の時流を捉えて、それに応じて変化しなければなりません。
美味しい料理を提供するという基本に忠実であり続けるという点は変わりませんが、お客様のご要望やご期待に柔軟に対応するためにレストランは変化が常に求められます。レストランはずっと同じところにいてはいけないのです。

ガストロノミーレストランのシェフは店に常に居続けることが必要だとお考えですか?

ラルマン氏:
私の居場所は常に厨房にあります。それは私の心が求めているのです。企業の一経営者としてはいかに自分が店にいなくても店が回るかを考えるべきなのかもしれませんが、料理を愛するものとしては、私が厨房にいないということはあり得ません。
「ラシエット・シャンプノワーズ」は家族経営であり、それこそがこのメゾンの雰囲気を醸し出しています。我々はプロフェッショナルであると同時に、お客様がくつろげる雰囲気を用意しています。私の料理は技巧的では決してありませんがシンプルで美味しいものです。
美食ほどに感情を掻き立てるものなんて他にあるでしょうか。美食こそがフォークと脳とを結びつける最短距離だと考えています。

シャンパーニュをインスピレーションの源とする料理やシャンパーニュペアリングについては、お父上の頃にはなかったアルノーさんご自身のアイデアはどのように生まれたのでしょうか?

ラルマン氏:
父とは世代も違いますし、やりたいことも違います。私の料理の方向性は長い時間をかけてゆっくりと形成されてきました。私は、機会を見つけてはシャンパーニュの造り手を訪問し、畑を歩き、樽からワインを試飲しています。それは瓶詰めされたものとは違い、その年の特徴を表現しています。各年の各生産者の各キュベの味わいやそれらが熟成して変容していったさまが私の記憶には刻まれています。
私の自宅は、ブドウ畑のすぐ横にあり、毎朝起きて畑の様子を観察しています。ブドウ畑を歩き、シャンパーニュに囲まれて生きてきた私にとって、シャンパーニュを軸に料理を発想することはとても自然なことでした。

シャンパーニュという地域の料理文化はどのようなものがあるのでしょうか。

ラルマン氏:
この後、召し上がっていただくことになりますが、シャンパーニュ地方の料理というのももちろんあり、素晴らしいシャンパーニュと共に文化を作り上げています。私はシャンパーニュが大好きで、料理をしている以外の時間は畑や蔵を訪問しています。これが私の料理の源泉となっています。

L’ASSIETTE CHAMPENOISE(ラシエット・シャンプノワーズ)外観

L’ASSIETTE CHAMPENOISE(ラシエット・シャンプノワーズ)

お問い合わせ
0033 (0) 3 26 84 64 64
アクセス
40 Avenue Paul Vaillant-Couturier, 51430 Tinqueux
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営業時間
12:00~13:30, 19:30~21:30
定休日
火曜日、水曜日
年次定休日: 詳しくはWebサイトを参照
(2018年の年次定休期間は2月11日~3月8日と7月31日~8月15日)