愛するシャンパーニュの地で家族経営のメゾンを守り抜き、レストランが本来あるべき姿を示してくれる三つ星シェフ

L’ASSIETTE CHAMPENOISE(ラシエット・シャンプノワーズ)
Arnaud Lallement(アルノー・ラルマン)

L’ASSIETTE CHAMPENOISE(ラシエット・シャンプノワーズ)

■気候や素材の旬をすべて把握し食材を選択する

あなたの料理とは、あなたにとっての料理とは何でしょうか。

ラルマン氏:
シャンパーニュの味わいは真っ直ぐで純粋で酸が支えているという表現をされています。私の料理はシャンパーニュのように、「酸が全体を支え、真っ直ぐで、純粋である」ことにこだわっています。また、時季に応じた本物の食材を用いることが重要です。

私の料理はいたってシンプルです。お店に来られるお客様は料理のプロではないのだから、技巧を凝らした料理を期待しているのではありません。もし技巧を凝らすとしても、それがお客様には見えてないことが理想です。料理に込めた情動(エモーション)を伝えてくれるのは味わいだからです。
料理を作り上げるのは愛です。私の厨房には愛があふれています。料理は私の心を晴れやかにさせ、私がかけがえのない瞬間に生きていると感じさせてくれます。

今日はプチポワ(グリーンピース)の皿が食べられないのは残念です。

ラルマン氏:
例えば今、あなたがおっしゃったようにあなたが今日プチポワを食べたいと思ったら、外に出てみてください。雨が降っていて、寒く、湿度が高いことに気が付くはずです。
明日はキノコが手に入るでしょう。私はシャンパーニュ産のプチポワを使いますがプチポワは天気が良く、気温が高くないと育たないので、ここシャンパーニュでは暑くなる7月を待たないとプチポワが手に入らないのです。
私はシャンパーニュ地方の気候や素材の旬をすべて把握し、食材の生産者たちを全員知っています。だから私はここで料理を続けたいのです。

料理人のメディア露出についてどうお考えですか。

ラルマン氏:
私の店は、毎日昼夜満席です。他のことをする時間はありませんし、メディア出演のために店を離れることはありません。毎週のようにテレビに出演するシェフがいたとしても、それは彼らの情熱がそこにあるからでしょう。私はそうしないというだけで、そこにいかなる価値判断もありません。私は他のシェフ達が何をしようとそれを批判したり、それについて何かを判断したりすることはありません。重要なことは、シェフが各々の情熱に根ざしてそれぞれ自分自身の判断でやるべきことを決断することです。

L’ASSIETTE CHAMPENOISE(ラシエット・シャンプノワーズ)

あなたのお料理はソースの欠かせないクラシックなフランスガストロノミー料理ですね。ミシュランガイド三つ星獲得に至った理由はお料理が進化したからなのでしょうか。

ラルマン氏:
美食というのはソースがあってこそ成り立つと私は考えています。率直に言えば、ソースを重視していないレストランでソースの無い皿が続くと悲しくなってきます。

私たちの料理には進化や進歩を感じるとお客様に言われていますが、厨房にいる私たち自身は料理が進化したとは考えていません。一日中厨房にいる私たちは進化を感じるのは難しいのです。

ミシュランガイド三つ星獲得の前と後であなた方のエスプリには何も変わりがないと考えてよいですね?

ラルマン氏:
三つ星の獲得によりあらゆるものが進展しました。三つ星という評価はこのレストラン業界のお墨付きを得たということですし、経営的にも余裕が出ました。これは否定できない事実です。
これまで私はやりたいことに集中して取り組んできました。三つ星を獲得したことにより、これまで続けてきたことをこれからも続けていくことができるようになりました。星の数にかかわらず、この仕事の芯の部分は変わりません。お客様を満足させ続けることなのです。

L’ASSIETTE CHAMPENOISE(ラシエット・シャンプノワーズ)Arnaud Lallement(アルノー・ラルマン)

■今後の展望と若手へのメッセージ(2014−現在)

あなたが営む事業はここだけですね。レストランとオーベルジュ事業をこれ以上拡大する意向はありますか?

ラルマン氏:
この場所しかないという風には考えていません。むしろ、もう既にここに全てあると思っています。いつもレストランは昼夜満席でうまくいっています。55人の従業員を抱え、レストランだけで毎日16、17時間の時間を過ごしていますが、これだけでかなり大変なことです。しかしこれこそが私が今後も続けていくべきことだと感じていますので、今の規模を拡大するということは考えていません。

例えば他の三つ星レストランでは、支店や料理学校や小売店舗を近郊の街やフランスの首都パリに置く、海外支店を持つなど、拡大路線の活動に移行していく人が多いようですが。

ラルマン氏:
多くのシェフが次々に新しい店を開けようとしている傾向は私にとっては奇妙ですが、それぞれのレストランが好きなようにすればいいと思います。例えば、あなたが今例に挙げた三つ星レストランの中の一つのシェフであるOlivier Rollinger(オリヴィエ・ロランジェ)は長い間、ガストロノミーレストランだけを経営してきましたが、その後、違った方向に事業を展開しました。それだけのことです。
実際のところ、私の元にはいつも何らかの新規プロジェクトの提案が外部からあります。しかし今のところ、私はガストロノミーレストランの経営という方針を変更するつもりはありません。このメゾンでこれまで多くの時間を過ごし、レストランに多くのエネルギーを注いできましたが、それがとても幸せなことだと思っているからです。

採用や人材教育の困難はありますか。

ラルマン氏:
若い世代の働き方が私の時代とは変わって来ているのは事実です。しかし、時代の移り変わりの中ですべて物事は変わりゆくものです。そのうちの一つに過ぎません。

若いシェフへのアドバイスをお願いします。

ラルマン氏:
できることは全て情熱をもって全力で取り組まなければなりません。これこそが最も重要なことです。同世代の他の若者と比べてバカンスに行けないとか夜遊びする時間がないとか愚痴を言わずに、できる事とやらねばならない事に集中すべきです。集中できるものがあるということは素晴らしいことなのだということを認識すべきです。

今の若者は、15歳か16歳で学校で料理を勉強しながら同時に現場での研修も受け、知識と技術を身に着けます。その過程で飽きてしまったり、学校に行きたくなくなってしまう若者もいますが、彼らも継続すれば10年後にはどこかのレストランのスーシェフになり、20年後にはもしかすると三つ星シェフになっているかもしれません。
時間はかかりますが、辛抱強く継続して成功を掴んで欲しいと思います。厨房での料理人の仕事は、そういった長期間の継続的な努力に見合う素晴らしい仕事だと考えています。

料理人は職人であると言う方がいますが、やはり才能は重要なのでしょうか?

ラルマン氏:
料理人として、キャリアのあらゆる段階で才能が無ければなりません。料理人は、職人的な側面、アーティスト的な側面、才能、情熱それら全てが重要ですし、料理することを愛し、魂が込められていなければなりません。

あなたの情熱の源泉はなんですか?また、これからの課題をお聞かせください。

ラルマン氏:
私を人生に駆り立てるのは、シャンパーニュにまつわる全ての事柄です。
常に目の前のことに全力を尽くすことが念頭にあります。ひとまずこの後の今日の午後のサーヴィスに集中することが現時点での最大の課題です。お客様に圧倒的なサーヴィスを提供すること。これが私の人生で最も重要な課題です。

(聞き手 / 文:石黒 陽子、写真:店舗提供)

L’ASSIETTE CHAMPENOISE(ラシエット・シャンプノワーズ)内観

L’ASSIETTE CHAMPENOISE(ラシエット・シャンプノワーズ)外観

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(2018年の年次定休期間は2月11日~3月8日と7月31日~8月15日)