全ての道は繋がっている、かつて外交官を目指したシェフが牽引するスロベニアの「ガストロノミー外交」

Hiša Franko (ヒサ・フランコ)
Ana Ros(アナ・ロス)

画像提供:ongwatstudio

■「ベスト女性シェフ」を受賞したことの意味。シェフが女性であること

2017年に、世界のベストレストランで「ベスト女性シェフ」を受賞されましたが、シェフとして女性であることのアドバンテージはあると思いますか?

ロス氏:
確実にあると思います。男性よりも、注目を集めやすいということです。例えば、私は受賞後、1年間で510ものインタビューを受けました。世界一になったマッシモ・ボットゥーラ(Massimo Bottura)や、ダニエル・フム(Daniel Humm)ですら、これだけの回数のインタビューは受けていないと思います。

世界的に見ても、女性のシェフはまだまだ少ないですね。

ロス氏:
料理を作る上では、性別は関係ありません。男性シェフで、女性よりも繊細な感性を持っている人はいくらでもいますし。
この業界はとてもきついですし、女性の社会的役割というのは、一般的に男性よりもっと複雑だと思います。特にスロベニアではまだ、男性は外で働き、女性は家族の面倒を見る、という社会的役割を期待されることが多いです。例えば、学校で子どもが悪いことをしたら、「お父さんを呼びますよ」ではなく「お母さんを呼びますよ」と言われます。そういった意識は、一世代で変えることは難しいかもしれません。

ただ私は、男女で異なった役割がある、とは感じています。例えば、男性は母の役割をすることはできないと思うのです。母は子ども達のケアをする役割がある、子供達を抱きしめる時間を持つことが大切だと思っています。
私には同居している義両親と、信頼できるチームがいるので、子どもたちの用事でレストランを離れることもできますし、レストランを離れて海外にいても、特別なことがない限り、子どもたちに電話したりしてコミュニケーションをとることにしています。子育てにおいては、子どもたちに、気にかけている、ということを示すことが大切だと思っています。

それと同時に、自分一人で全てを抱え込まないことも大切です。子ども達が幼い頃は、私が料理を作っている間、食事客に面倒を見てもらった事もあるほどなのです。
私は社会的にオープンなタイプで、自分の子どもは絶対に自分で育てなくては、という考えに囚われるほうではなかったのもうまく両立できた理由の一つだと思います。子ども達もスタッフを家族のように感じているというのも大きいですね。

家族のような関係をスタッフと作るためにはどうすればいいのでしょうか?

ロス氏:
一緒に過ごす、ハッピーな瞬間をなるべく作るようにしています。コミュニケーションを取るためには、相手の性格を知る事が大切です。そのために、希望者を募って、今年から週に何回か一緒にヨガレッスンを受けたり、ランニングをするなどして、コミュニケーションを取っています。
一緒にタバコを吸うよりも、健康的でしょう? まかないには、スタッフの家族も参加できますし、みんなで交代で料理を作って、まるで一つの家族のようになっていると思います。

■これからの夢、ガストロノミーによる外交。

これからの、新たな挑戦とはなんでしょうか?

ロス氏:
「ベスト女性シェフ」になって、次のプロジェクトは何かと、どのインタビューでも聞かれるので、新しいプロジェクトを探さなくてはいけないと感じています。
私は両親に、野心を持つように、と言われて育ちました。実はもともと、自己肯定感の低い人間です。ですから、定期的にリサーチをして、自分の料理を更に良くするためにはどうしたらいいか、を常に考えなくてはならないと感じています。

もちろんメニューは定期的に変わります。毎日生きている中で、自分自身が変わっていくのですから、料理だって同じである訳がないのです。
最近のチャレンジとしては、去年「オステリア」をオープンしたことです。義母が料理をしていた時代に来ていた、当時の常連客が帰ってきました。地元の食材を使い、低脂肪にしてハーブを加えるなどして、現代風に味を整えた伝統メニューを提供しています。

自分自身の店をオープンして成功したいという若い人たちにアドバイスはありますか?

ロス氏:
料理は自分の歴史であり、物語ですから、自分の答えは自分で見つけないといけないのだと思っています。
成功するためには、謙虚であること、好奇心を持つこと、挑戦すること、色々な人に対してオープンであること、そして、子どもらしくあること。
子どもはよく質問するでしょう?それは、クリエイティブであるということなのです。もちろん、モチベーションと規律を守る気持ちを持ち続ける事も大切です。

外交官にならずに、料理の道を選びましたが、今はガストロノミー外交という言葉もある時代です、今なさっていることは、外交とも重なる部分があるのではないですか?

ロス氏:
そうですね、外務省や世界の大使館に元同級生がいますが、「アナ、外交の世界に戻って来たね、我々がやるより上手にやっているね」とよく連絡が来ます。
文化の中でも食は最も美しいものです。私のミッションは、人と文化をつなげて多くの人をスロベニアに呼ぶこと、スロべニアを美食の旅先として知られるようにすることだと思います。

(インタビュー・文・撮影:仲山 今日子)

画像提供:Suzan Gabrijan

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