世界大会でも、小さな喫茶店でも同じ。 目の前のお客様を楽しませるのが、僕の仕事。

Okaffe Kyoto(オカフェ キョウト)
岡田 章宏

■自分が輝ける場所は、自分の手で作る。巡り合った理想の店舗。

生涯現役でいたいと思われたわけですか?

岡田氏:
簡単に言えばそうですね。たとえ小さな店であっても、パフォーマーとして自分が輝ける場所に立っていたい。その思いが大きくなり、いろいろと考えるようになりました。

もちろんリスクはあります。でも、たとえ大きく収入が減るとしても、自分の店で働く方がいきいきと過ごせるんじゃないだろうか。自分が一番輝ける場所は、自分の手で作りたいと思いました。

バリスタとしての実績は十分。独立もすんなりと進んだのでは?

岡田氏:
いえいえ、とんでもないです。独立しようにも、まず店がありません。というのも、僕がこだわりたかったのは、自分が生まれ育った京都で、しかも僕の地元で店を立ち上げること。妥協のない店を作りたかったんです。

ところが、この辺りは飲食店やホテルがひしめく激戦区。「とてもじゃないけど、いい場所なんて見つからないですよ」と、行く先々の不動産屋さんに言われました。立地に優れた店舗というのは飲食業界で先に情報が回って、なかなか表には出てこないそうです。

このお店(Okaffe Kyoto)は、どうやって見つけたのですが?

岡田氏:
最後に訪れた不動産屋さんに無理だと言われて外に出た瞬間、「だったら自分で見つけてやる!」と思い、実際に歩いて物件を探す決心をしました。

言い方は悪いですが、古びた喫茶店で後継者がいなくて、廃業を考えている店はきっとあるだろう、と。大きさは15坪ぐらい。店の中が十分に見渡せるぐらいの広さです。

で、不動産屋さんを出て、歩いて10分。いきなりこの場所を見つけたんです。

10分!?

岡田氏:
ええ、笑っちゃいますよね。ここはもともと「TeaRoom Jun」という喫茶店でした。その名も順子さんというご年配の女性がオーナーで、40年も商売を続けていらっしゃいました。まさに想定した通りの「昭和の喫茶店」です。広さも理想的、場所も理想的、そしてオーナーはご年配の方。

「このお店、いつまで続けられるおつもりですか?」。

それが初対面での順子さんとの会話です。「できれば来年ぐらいには店を閉めたい」と順子さん。一方の僕は、来年ぐらいに店を持ちたいわけです。「代わってもらえませんか?」という提案をしました。

実は順子さんは、店を譲るのにあたって、もうすでにいろんなお誘いの話があったそうです。でも、すべての話を断っていらっしゃいました。まず第一に、バーや居酒屋のようなお酒を出す店はダメだと。ご近所さんに迷惑になります。ご自分が店を閉めた後のことまで、しっかりと考えていらっしゃったんです。

岡田さんはどうやって説得されたんですか?

岡田氏:
1つ運が良かったのが、順子さんのお店ではずっと小川珈琲から豆を仕入れていらっしゃったことです。「小川珈琲の営業担当はみんな親切で、とても信頼できる人間だった」とおっしゃいました。僕の小川珈琲の名刺を見て「だったら信用できる」と言ってくださいました。そこから一気に、独立への具体的な計画が進んでいきます。

■どんな高級な豆を使っているかではなく、誰が淹れたコーヒーであるかに価値がある。

素晴らしい出会いでしたね。このお店のコンセプトを教えてください。

岡田氏:
今のカフェと言えば、オシャレなソファやテーブルがあって、1人の時間を過ごすような店が主流です。チェーン店に多いパターンと言えるでしょう。でも僕が作りたいのは、そういう店ではありませんでした。もっとサービスする側とお客様が向き合える場所を作りたいと思いました。

チェーンのカフェでは、お客様はみんな壁や窓に向かって座っています。誰もコーヒーを運んでくるスタッフとは話をしません。いわば、スタッフとお客様は背を向け合っているわけです。

バリスタがいる店は、黙ってコーヒーを飲むのではなくて、コーヒーを介して人と人が会話して、お客様を笑顔にして、元気にする店です。だからこそ、この店にはカウンターがあって、どの席からでもサービスマンである僕が見えるようなつくりにしています。カウンターの中のパフォーマンスを見ていただいて、帰る時には「楽しかった、また来るよ」と言っていただけるのが最高です。

チェーン店とは全く違う戦略ですね。

岡田氏:
一言で言えば、人ありきのサービスを提供したかったんです。だからこそ、この店の名前は岡田のカフェで「Okaffe Kyoto」。店のロゴも僕がドリップしているシルエットがモチーフです。

豆の産地にこだわったり、高価なマシンを使って作るコーヒーもいいのですが、それよりも岡田という人間が淹れたコーヒーを味わってもらいたい。岡田というサービスマンの店に行きたい、と思っていただけるようにしたかったんです。

例えば、エスプレッソの本場イタリアでは、バールのお客はバリスタにつきます。ひいきのバリスタが違うバールに移ると、お客もバールを変えるんです。それぐらいバリスタという職業が認められていて、地位も高くなっています。イタリアだけではありません。アメリカやオーストラリアも同様です。

日本では、誰が淹れたコーヒーであるかよりも、豆の種類に注目が集まりがちです。コーヒー業界のトレンドであるサードウェーブは、その典型でしょう。有名な農園で収穫した有名な銘柄の豆を使ったスペシャルティコーヒーが好まれる傾向にありますが、僕が提供したいのはマニアックな知識ではありません。誰が淹れたコーヒーなのか、誰が運んできたコーヒーなのか、そこに価値を感じてもらいたいのです。

Okaffe Kyoto(オカフェ キョウト)

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9:00-21:00 [l.o. 20:30]
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