2020.01.09

地元奈良食材のイン・ブロード │ コムニコ 堀田 大樹│新作料理へのアプローチ

奈良県生駒市。閑静な住宅街に、イタリア料理をベースとしたオリジナリティ溢れるイノベーティブ料理を提供する「communico(コムニコ)」はあります。

シェフの堀田 大樹氏は、2005年大学卒業後、渡伊。ボローニャ イル ソーレ(当時ミシュラン1つ星)を中心に研鑽を積んだ末に、2006年帰国。その後、カノビアーノ京都、リストランテ イ ルンガなどで腕を振るい、2014年より約一年間、ランベリーにてフランス料理の技術を学ばれました。

現在は、“有機・ローカル・自由”をコンセプトとしたレストランを手掛ける堀田シェフに、新作料理へのアプローチ
について聞きました。また堀田氏の師匠である、アコルドゥ川島シェフから影響を強く受けた料理発想の源泉についてもお話頂きました。

料理ポイント1:馴染みのある食材とヨーロッパ食材の組み合わせ。奈良の食材をふんだんに使いながらもイタリアらしさをどことなく感じる一品に仕上げる。

料理ポイント2:森をイメージするようなトッピングを加え、より秋らしさを演出


目次

1.作り方
2.本一品への着想
3.アプローチポイント
4.店のこだわり
5.店舗情報

作り方

1.今日はイン・ブロードといって、スープ仕立ての料理を作ります。まずは素材をご紹介します。

画像中央下のペーストが、里芋とトリュフを刻んだペーストです。トルテッリの具材として使用します。トルテッリとは、薄くのばしたパスタの生地にフィリング(肉や野菜、チーズなど)を詰めた具入りパスタのことです。

あとは、浮身に使う大和肉鶏のミンチとむかごです。

生ハムと乾燥したキノコはスープに使います。生ハムは生ハムのスネの部分を使います。

キノコは2種類。1つ目は椎茸は奈良の月ヶ瀬で作られた天日干しの干し椎茸です。機械干しと比べると旨味の出方が全然違います。もう一つはフランス産のドライにしたクロラッパタケです。

2. まずパスタの中に入れるペーストを準備します。

奈良県産の里芋はオーブンで岩塩を敷いた状態で1時間ほど柔らかくなるまで焼きます。岩塩を敷くのは穏やかに熱を入れていきたいのと、水分を抜いた状態に仕上げたいという理由からです。オーブンで焼いた里芋をペーストにして、イタリア産のトリュフを細かく刻んだものをバターで炒めて混ぜ込みます。こちらは今回はすでに下ごしらえを済ませています。

続いてスープに使う干し椎茸、クロラッパタケは、水に浸して冷蔵庫で一晩置きます。出し殻はまかないで使ったり、ベースのストックで鳥のブイヨンなどを取る時に使ったりします。

生ハムは脂の部分は取り除き、実の部分だけを使います。一晩置いたキノコの出汁に入れ、湧いてから灰汁を取り除いて30分ほど弱く炊き込みます。

3.パスタとスープの具材を作ります。パスタは卵黄、デュラムセモリナ粉で予約の分だけを事前に練って用意したものを伸ばして、型を使ってくり抜きます。

パスタはあまり捏ねすぎずに、比較的サクッと食せるような食感になるようにしています。

パスタに先程の里芋とトリュフを一緒にしたペーストを具材にしてトルテッリにします。ペーストを乗せて、包みます。


トルテッリも色んな形があって、今回はドトルテティというものですね。


このパスタをさっと湯がきます。

4.パスタ以外の浮身を作ります。

ムカゴは下茹でした後、米油で揚げてあります。

大和肉鶏のポルペッティーニ(つくね)は腿肉のミンチに塩、胡椒、ナツメグ、少量のパルメザンチーズ、卵を加えて練ったものになります。 肉鶏のブイヨンで下茹でしてあります。

5.盛り付けます。トルテッリ、ムカゴ、鶏つくねがあたたかいうちに器に盛り、スープをかけます。
お客様にご提供するときに、黒トリュフのスライスをまぶします。森をイメージするようなトッピングを加え、より秋らしさを演出します。これで感性です。

本一品への着想

■秋の香りと旨味を感じさせるスープ

スープ料理をイメージした際に、秋を感じさせる食材としてキノコを考えました。
単純に具材としてではなく、スープとして香りと旨味を感じさせるものにし、秋の森をイメージできる、ほっこりするような一品にしたいと食材をチョイスしました。

いまの奈良の生産者の方から分けてもらう食材を使って、馴染みのある安心した口当たりながらも、旨味や香りがヨーロッパを感じられるような料理を目指しました。

※10月に取材させて頂きました。

―奈良の食材だけでなく、イタリア産、フランス産のものも採用されておられますね。

基本的には奈良産のものをベースにとしていますが、味の着地点としてヨーロッパを感じるものに仕上げていきたいと思っています。ですので、生ハムもそうですが、クロラッパタケなどを使うことでヨーロッパの香りを感じてもらえるものになります。

先程の干し椎茸だけでスープでも十分美味しい料理には仕上がるのですが、ただそうすると日本人として味に馴染みがありすぎます。コムニコとしての料理を考えた時に、そこにヨーロッパ的な旨味や香りを感じる料理に着地させたいという想いがあります。ということで奈良県産以外の食材も積極的に使っています。

―こちらの料理はコースのなかではどのタイミングで提供する一品になるのでしょうか。

初めの方になります。パスタを使ってはいますが、コースの中では温かい前菜というポジションとして捉えています。
パスタやムカゴはスープの浮身だという感じですね。

―トルテッリの具材はどういったものが使われるのでしょうか

バリエーションは色々ありますね、お肉を詰めたものや、チーズだけのもの、野菜をペーストにしたようなもの。
水気があると置いてるとベタッとするので、水分をなくして使いますね。今回の里芋もそうですね。

アプローチポイント

■料理都合で食材を選ぶのではなく、農家さんの方の素材から料理を組み立てる

何を食べているのか分からない料理ではなく、素材がしっかり感じられる料理がぼくは好きだということもありますが、コムニコの料理はまずは素材ありきという考えです。

食材も生産者の方から直接頂いているものが多いので、お店都合、料理都合で食材を選ぶのではなく、お付き合いしている農家さんの畑で今これが採れるから使うというアプローチです。農家さんの方でいまこれを使って欲しいというのが絶対ありますから。
それを無視して、こういう料理を作りたいからこういう食材が欲しいというお願いをすることはないです。

いまの時期に採れる食材があって、それを使って料理をするという自然のサイクルを守りたいと思っていますし、その時期に相応しい食材があるので、料理は素材から組み立てることが多いです。

店のこだわり

■見た目は質素でも、仕込みに一手間かけた美味しさを届けたい

レストランをしていくなかで、ぼくの料理もよりシンプルに味にフォーカスするようになったと思います。
装飾に一手間二手間かけるよりも、仕込みに一手間かけたほうがお客様にダイレクトに伝わるという感触がありました。
なので見た目は質素でも、ちゃんと美味しさを届けられる料理にしていこうと。

そういうこともあって、提供する料理と店内のイメージに隔たりが出始め、最近お店をリニューアルしてカジュアルな感じからシックで落ち着いた内装にしました。

イタリアで修業してきたのもあるので料理のベースとしてはイタリア料理なのですが、それに囚われないであくまで僕の料理を作りたいと思っています。

ヨーロッパにはフランス料理を始めとして様々な料理ジャンルがありますが、地方に行けばその地方料理、伝統料理といわれるものがあって、それはその土地、身の回りで採れる食材を使ってどう美味しくできるかを突き詰めた結果できあがっている料理です。

料理そのものを模範して作りたいというよりは、その料理が生まれる過程、考え方に対してぼくはリスペクトしています。
ですので、いまぼくは奈良に育って、奈良に暮らしていますから、自分の身の回りでどういったものが作られていて、それをどのように使うと最も素材を活かせるのかといったことを考えて料理をしています。

出来上がった料理そのものは違うものになっているかもしれませんが、料理へのアプローチ、考え方というのはヨーロッパの地方料理と本質的なところでは繋がっていると思っています。

日本に帰ってから川島シェフというクリエイティブに溢れた料理人の元で働いて、ぼく自身も自分のこれまでのルーツは大事にしながらも、自分の料理を考え手掛けていきたいと思っています。

店舗情報

  • communico(コムニコ)

    ■お問い合わせ
    0743-85-6491
    ■アクセス
    〒630-0213 奈良県生駒市東生駒2丁目207-1-111
    ■営業時間
    【火~日・祝・祝前】
    ランチ 12:00~15:00 (L.O.13:00)
    ディナー 18:00~22:00 (L.O.20:00)
    ■定休日
    月曜
    ■HP
    https://communico.jp/

 

(文:市原 孝志、写真:岡 タカシ)